看護師がクリニックへの転職の前に知っておきたいことは?



看護師だからと言って全員が総合病院でバリバリ働いている訳ではありません。少しゆったり働きたい、仕事と家庭のバランスを取りたいなどの理由で、転職先にクリニック(診療所)を選ぶ方も少なくありません。

ですが、勤務先としてのクリニックは総合病院と較べてどうなのでしょうか?ここでは、看護師がクリニックへ転職する前に知っておきたい予備知識について紹介します。


看護師の転職先としての、クリニックのメリット・デメリット



ここでは、総合病院との比較で、クリニックで働くことのメリット・デメリットについて紹介します。なお、クリニックは診療所・医院とも呼ばれますが、以下では呼び方を「クリニック」で統一します。

クリニックで働くことのメリットは?

仕事の負担が少ない

もちろん、クリニックでの仕事が楽ということではありませんが、総合病院(の特に病棟勤務)の目まぐるしいほどの忙しさに較べれば、負担がずっと少ないことが多いです。

また、大病院(特に大学病院)であれば勉強会や報告会が頻繁にあり、看護師への負担が一層重いのに比べ、クリニックでは勉強会もないため家庭との仕事の両立も容易です。


ちなみにクリニックでの看護師の仕事は、大きく言って2つに分けることができます。外来業務と、看護業務(病棟業務)です。外来業務は窓口で患者の対応をするもので、コミュニケーション能力やテキパキとした判断力が求められます。


看護業務は勤務するクリニックの種類によって、仕事内容が違ってきます。内科などでは医師の診療介助などが主な業務です。ですが、透析クリニックなどではもう少し専門的なスキルが求められます。

美容クリニックでは、医師の指導の下、患者への脱毛施術を看護師が行う場合もあります。

クリニックで多い診療科については、また後ほど取り上げます。

夜勤がない(ことが多い)

看護師業務の中でも何がキツイかというと、夜勤業務だという方は沢山います。

夜勤自体がカラダへの負担が大きいことに加え、生活リズムが崩れやすくなるため眠って疲れが上手く取れず、疲労を抱えたまま看護業務にあたる方も少なくありません。


クリニックは施設の関係もありますが、夜勤勤務がないことがほとんどです。仕事と生活のバランスが取れやすく、クリニック業務が看護師に人気の理由の一つになっています。


ただ注意点としては、クリニックの中でも夜勤業務があるものもあります。また夜勤はないけど、準夜勤(遅番)がある仕事もあります。この辺はまた取り上げますが、「クリニックにも夜勤・遅番がある仕事もある」ことだけは覚えておいてください。

クリニックで働くことのデメリットは?



人間関係が大変

「クリニックの方が総合病院よりも人間関係が大変」と書くと、病棟勤務の看護師の方から不満の声が上がるかもしれません。確かに、病棟看護師の職場内の人間関係は大変です。

医師との関係や患者との関係に加え、同僚や先輩看護師との関係が特に悩みの種です。特に看護師は数が多いので「派閥」ができて、どの人がどの派閥に属するか等、仕事以外の気苦労が多く、病院看護師のストレスの原因の一つです。


それでは、大病院に較べてクリニックの方が人間関係が難しいことが少なくありません。その理由はクリニック内の人数の少なさです。

病院にも「敵」(パワハラをしたりいじめたりする人)はいますが、同時に味方になってくれる人も少なくありません。一方でクリニックでは、同僚看護師やスタッフとソリが合わないと、狭い空間である分、一層ストレスに感じられます。


また大病院に較べてもクリニックの方が、医師が権力を振りかざすパターンもやや多いです。クリニック内では他に医師がいないため、「歯止め」がないためです。


ただ勘違いして欲しくないのは、クリニックは一律に人間関係が厳しい訳ではないということです。実際、クリニック内の人間関係に恵まれて、クリニックに転職してよかったと感じる看護師も沢山います。

結局は職場によって(またその人の相性によって)、人間関係の良しあしは変わってきます。

とはいえ、クリニックに転職して人間関係が一層厳しくなったと感じる方が多いのも事実なので、その点は事前に覚えておくとよいでしょう。

<関連記事>
看護師の転職理由、先輩看護師からのパワハラ

仕事面での刺激が少ない

上でも書いた通り、クリニックは仕事の負担が少ないのが魅力の一つです。これは一つには労働時間が(つまり仕事量が)少ないことですが、もう一つは高度な看護技術が求められないということでもあります。

大学病院にいると忙しい仕事の合間をぬって勉強会・報告会を開いて最新の看護技術について勉強し、そのスキルを身に着けようと日々努力します。


クリニックはこうしたスキルアップとは無縁で、ある意味「ぬるま湯」で気が楽ではあるものの、日々の仕事が物足りないと感じる看護師も少なくありません。


大学病院の救急救命で活躍していた看護師が、そのあまりの忙しさに音を上げてクリニックに転職したものの、クリニックの「暇な毎日」を過ごすうちに昔の忙しかった日々が懐かしく感じられ、別の大病院に転職したという方もいます。


また、看護技術は使っていないとドンドン衰えていきます。クリニックではそうした技術を使う機会もなく、自分のスキルが落ちていくのに恐怖心を感じて、また総合病院に戻ったという方もいます。

お給料(や福利厚生)がマイナス

総合病院からクリニックに転職すると、給料が落ちるのが普通です。基本給がクリニックの方がやや低いのもあるのですが、それ以上に大きいのが夜勤代です。

看護師の給料は基本給が低い代わりに夜勤代が積み増しされているパターンが多いため、日勤のみの勤務だと年収ベースで100万以上落ちることも珍しくありません。


東京で、日勤常勤でクリニックに勤務した場合、年収は350~360万程度が相場です(地方だと、ここから更に2~3割落ちます)。ただお給料はクリニックの種類によって違いますので、この点は後で改めて説明します。

また、社員寮や託児所などの福利厚生施設も、総合病院に較べてクリニックの方が劣ることが多いです。

意外に休みを取りづらい

クリニックというと、休みを取りやすいと想像している方が多いと思います。確かに職場によっては、そういう所もあると思います。ですが一般的には、クリニックでは休みが取りづらいの普通です。

というのもクリニックは少ない人数で回している場合が多く、一人欠けるだけでも仕事が滞ってしまうためです。


クリニックに転職したある看護師は、子供の学校行事のためにクリニックでお休みを貰いました。

このクリニックでは、人手が足りない時は医師の奥さん(看護師)が臨時で出勤するのですが、休みを取る度にこの奥さんに嫌味を言われ、休みが非常に取りづらくなったと語っています。


もちろん、クリニックによっては規模の大きいところもあるので、そうした職場ならある程度休みは取りやすいでしょう。この点も転職前には事前に確認しておくとよいでしょう。

<クリニック・総合病院の勤務条件の比較>

クリニック 総合病院
年収 350万~ 450万~
夜勤 なし あり
福利厚生 なし あり
仕事の負担 軽い 重い
福利厚生 なし あり
仕事の負担 軽い 重い
勉強・刺激 ならない なる
人間関係 すごく大変かも それなり
休み 取りづらい 取りづらい
(上記の年収は東京の相場です。地方は2~3割は落ちます)


クリニックの種類、給与・勤務体系は?



上では、総合病院とクリニックの待遇・勤務条件の違いを比較しました。ですがこれは一般論で、同じクリニックでも職場によって環境は違います。

特にクリニックの場合、その種類によって勤務条件も変わってきます。以下では、クリニックの種類について紹介します。
(下で紹介する年収は東京の相場です。地方はここから2~3割は落ちることは覚悟してください)

内科(ほか)のクリニック

街でよく見かけるクリニックの典型です。内科だけのクリニックもありますが、大抵は外科・循環器科・胃腸科など診療科を併用していることが多いです。求人の仕事は外来と看護業務の2つですが、外来の求人の方がやや多いです。

年収は350万以上が相場です。(パートの)時給では1500円以上が相場です。夜勤もなく遅番もないため、仕事の負担はそれほどでもないでしょう。

産婦人科(レディース)クリニック

女性向けの手術・治療を専門とするクリニックです。クリニックとしては好条件の求人が多く、年収ベースで500万以上の求人が多いです。福利厚生もクリニックの割に充実しています。

難点としてはクリニックでは珍しく、夜勤があることです。また前職で、オペ室の経験を求められる場合もあります。

透析クリニック

最近求人を増やしているのが、透析クリニックです。透析の経験がある方が優遇されますが、未経験でも転職は可能です(ただし、月収を2~3万マイナスになることもあります)。年収は360~450万円が相場です。

勤務条件での注意点として、夜勤こそないものの遅番や準夜勤があることです。遅番勤務が嫌な方は、この点は事前に確認しておくとよいでしょう。

美容外科・皮膚科クリニック

産婦人科には劣りますが、クリニックの中では好条件の求人が多いのが特徴です。仕事内容は、オペ介助・診療介助・外来のほか、(医師の指導の下)脱毛施術や、美容化粧品のセールスもあります。

オペ経験や臨床経験(2~3年)があった方が有利な転職ができますが、未経験の求人もあります。

年収は420万からのものが多いですが、夜勤がないので基本給は高いと言えます。ただし夕方以降のお客も多いため、夜は8時までと比較的遅めの勤務時間です。


難点はいくつかあるのですが、

  • 美容クリニックの求人は都市部に集中している
  • 看護師としてのスキルが磨けない
  • 容姿が採用基準になることがある(若い方が有利)
  • 自身で(脱毛など)施術を行う必要がある
  • 化粧品のセールスに違和感を感じるかもしれない

などが挙げられます。もちろん、美容外科クリニックの求人でも仕事内容は違うので、あらかじめ確認しておくとよいしょう。もし自分の(看護師としての)心情と合わない仕事なら、辞退した方がよいかもしれません。

精神科・心療内科クリニック

仕事内容は外来か診療介助がほとんどです。夜勤もなく年収は400万からと基本給は多少高めです。仕事も比較的楽なのですが、求人数がきわめて少ないのが難点です。

特に地方には、こうしたメンタル専門のクリニックがほとんどないので、都心部を中心に求人活動を行う必要があります(ただ、都心部といえど求人数は少ないです)

<関連記事>
高級心療内科、看護師に人気の転職先

看護師がクリニックへ転職する前に抑えるべきポイント

以上、転職先としてのクリニックについて紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。以下、まとめです。

<クリニックへの転職のまとめ>
  • 仕事は楽なことが多いが、勉強になることも少ない
  • 夜勤がない分、お給料は下がることが多い
  • 狭い職場のため、人間関係がこじれるとやっかい
  • 職場によっては休みがとりづらい
  • 待遇はクリニックによって全然違う

皆さんがクリニックを転職先として検討するときは、上の点を意識しておくとよいでしょう。面接の際は、

  • 遅番はあるの?
  • 休みは取れるの?
  • 提示された年収は夜勤代(残業代)は込み?
  • 前に辞めた人は、どのくらいの期間働いた?

などを直接聞くことをオススメします。

また、クリニックへの転職活動では転職支援会社を活用することを特にオススメします。というのも、エージェントを通さずに直に応募してクリニックに転職すると、事前の約束と違う条件で働かされるケースが非常に多いためです。

ですが、エージェントを通していれば、クリニックのこうした「違法行為」を防ぐことができます。

クリニックへの転職活動を行う看護師の方は、この点特に注意してください。


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