近年、一般企業の社員が仕事や職場環境を原因として精神障害を起こした場合に、労災として認定されるケースが増加しています。このような事態を予防すべく行政でも対策が検討され、平成26年に労働安全衛生法の一部改正が決定ました。
この改正により、平成27年から企業における従業員のストレスチェック実施が義務化されます。このような社会動向に関連し、看護師の仕事ともつながる「産業カウンセラー」という資格があります。
産業カウンセラーとはどのような資格なのか、取得するメリットや産業看護師との違いについて、また資格の取り方についてまとめます。
目次
産業カウンセラーとは
産業カウンセラーは民間資格のひとつ
一般社団法人日本産業カウンセラー協会の認定資格である産業カウンセラーは、1992年の設立当時は厚生労働省による公的資格でしたが、2001年からは民間資格として運営されています。
以前は初級、中級、上級の3つの区分がありましたが、産業カウンセラーはその「初級」に当たり、カウンセラー資格のなかでは最も知名度が高いものです。現在では、中級はシニア産業カウンセラー、上級はキャリア・コンサルタントという名称となっています。
産業カウンセラーの仕事
産業カウンセラー協会では、産業カウンセラーとは「心理学的手法を用いて、働く人たちが抱える問題を自らの力で解決できるように援助することを主な業務とする」と定義しています。
産業カウンセラーは、色んな職場で働く人々が抱えるそれぞれの心の問題に対して、心理学的手法でサポートし、ともに問題の解決を目指します。カウンセリング対象は、一般企業、行政、各種団体の従業員、独立開業者、さらにその家族も含まれます。
心の問題を引き起こすものとして、働く方たちのメンタルヘルス、仕事を続けるうえでのキャリア開発、より良い人間関係の開発の3つの分野を活動領域とします。
産業カウンセラーを取得するメリット
看護師のキャリアアップ
看護師として勤務する中で「もっと心理的にも患者さんをサポートできれば」と感じる方は多いと思います。精神科や心療内科への勤務では、そのような機会はなお多いことでしょう。
心理面が及ぼす症状の予防に努めるのが心理カウンセラーの仕事であり、資格のために勉強すること、カウンセラーとして経験を積むことで、精神面のケアのスペシャリストを目指すことができます。
看護師になってから「心理学系の勉強をもっとしておきたかった」と思っても、再度大学や大学院に入学するのは困難です。産業カウンセラーの資格取得であれば、通信制で勉強する選択肢もあり、働きながら心理学的の基礎を学ぶことができます。
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転職でのアピールポイントに
面接で同じような実力の看護師がいれば、即戦力となってくれそうな資格や経験を重視するものです。産業カウンセラーの資格があれば役に立つと考えられるのが、企業看護師への転職です。
企業看護師の求人要件として必須なのは看護師か保健師の資格であり、産業カウンセラー資格は必須要件という訳ではありませんが、企業看護師面接で「産業カウンセラーを目指している」とアピールしたところ見事採用された、という方もいます。
同じ心理系の資格である臨床心理士などと比較しても、産業カウンセラーは産業場面でのカウンセリングや労働関係に特化した知識を持っており、十分なアピールポイントとなります。
企業におけるメンタルヘルスが注目される近年では、なおその傾向は強まると考えられます。一般企業での看護師募集は少なく倍率が高くなるので、必須ではなくても有利になる資格があれば心強いですね。
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とはいえ、ご存じの方も多いと思いますが、企業看護師はそもそも求人数が少なく転職は難しいです。
産業カウンセラーを持っていれば必ず企業看護師へ転職できるというほどのものではなく、せいぜいアピールポイントの一つになる、くらいの位置づけでいてください(つまり過剰な期待は禁物です)。
企業以外では、病院看護師がプリセプターとなって新人看護師を指導する際にも、産業カウンセラーとしての知識を活かせる機会があると考えられます。
仕事のやりがい
実際に企業や組合組織のなかで、従業員へのカウンセリングによって問題が解決し「ありがとうございます」と感謝の言葉をもらえたり、相談者の明るい表情が戻る瞬間を共有することは大きなやりがいとなり、病院勤務の時とはまた違った充実感を得ることができます。
フリーランスとして独立開業し、企業と契約を結んでカウンセリングに出向いたり、講習会の講師となるといった活躍もあります。看護師としての経験を基礎にしつつ、異なる分野でのやりがいを求められるのもメリットのひとつです。
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産業カウンセラーと産業看護師の違い
認定法、仕事内容の違い
産業カウンセラーになるには指定の講習を履修して試験に合格する必要があるのに対し、産業看護師は講習履修だけで認定が可能であり、資格ではなく認定登録制度のひとつです。
産業カウンセラーは医療従事者でなくてもなることができますが、産業看護師は看護師や保健師の資格と経験を要します。
仕事内容を比較してみると、産業看護師は、ひとつの企業のなかで従業員の健康管理やメンタルの問題を抱えた場合のフォローなど心身の健康全般をサポートするのに対し、産業カウンセラーの仕事は、従業員のメンタル分野のフォローに特化しています。
仕事の幅の違い
産業看護師はひとつの企業内で、看護を主として仕事を行います。一方産業カウンセラーの仕事はメンタル面のフォローにとどまらず、キャリアコンサルタントとしての業務や講師といった仕事も可能になり、求職先の幅が多様になります。
産業カウンセラーの資格を応募要件とする企業内人事の求人情報が見られたり、日本産業カウンセラー協会において、産業カウンセラーの求人募集を告知するケースがあります。
上級資格であるキャリア・コンサルタントの資格取得にもつながり、看護にとどまらないより多様な知識やスキルを身につけられる可能性が広がります。
産業カウンセラーを取得するには
受験資格
・20歳以上で、協会か協会委託で行う産業カウンセリングの講座、もしくは協会が同水準以上と認める講座を修得した方
・4年制大学の学部、研究科で心理学または隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかを修了した方
上記がカウンセリング協会が指定する受験資格です。看護師が改めて大学で履修することは難しいため、前者の指定講座の履修をクリアする方がほとんどです。
講座と試験の内容
産業カウンセラーを受験するための講座は、環境に合わせて通学制・通信制のいずれかを選択することができます。
通学制・・・4月~10月末(7ヶ月間)、受講料約21万円、申込みは1月~
通信制・・・11月~翌10月末(1年間)、受講料約19万円、申込みは8月中旬~
いずれも定員になれば受講者募集が締め切られるので、計画的な申込みが必要です。
受験要領の配布は10月から、出願はだいたい11月末まで、試験は1月末に行われ、3月上旬に合否が通知されます。試験内容は、選択式筆記試験と実技試験とで構成され、講座成績によって実技試験が免除されるケースがあります。
合格率は、一次試験で50%、二次試験で40%程度、毎年50%弱と言われますが、2012年度の実績では67.6%となっており、資格試験の難易度としては普通程度です。全国に約5万人程度の産業カウンセラーが存在します。
産業カウンセラーを目指すには、まずは講座を受講できる環境を整えなければなりません。現職では難しい場合、資格取得が可能な職場への転職を検討しましょう。
- 心理学的手法で働く人の心の問題を解決に導く民間資格
- 企業看護師転職の際に多少有利になることも
- キャリアアップ、やりがいにつながる
- 産業看護師とは認定法や仕事内容、分野が異なる
- 講座は通学制、通信制があり、筆記と実技の試験がある
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