看護師などの従業員が勤務先を退職する際に支給されるのが退職金です。退職金はすべての勤務先で支払われるとは限りませんが、制度を設けている病院やクリニックなら受取ることができます。
ここでは看護師の退職金の相場や退職金が多い職場について詳しく説明しています。
目次
看護師の退職金の相場は?
一般的な看護師が受取れる退職金の相場はどのくらいなのでしょうか?退職金の仕組みと併せて紹介していきます。
退職金の仕組み
退職金は法律で定められた賃金や報酬ではなく、企業や病院が独自に設けている従業員への慰労金です。慰労金とは職場で働いてくれたことに対し、労うためのお金を指します。普通の言葉でいえば「今までありがとう、ご苦労さまでした」という気持ちをこめて支払われるお金と言い換えることができるでしょう。
多くの場合、従業員へ支払う退職金の額は「就業規則」という社内規定で決められます。内容は雇用主側が自由に決めることができるため、A病院とB病院ではまったく違うというケースもあります。次によくある退職金の計算方法を挙げてみます。
(1) 基本給がベース
退職時の基本給に勤続年数を掛けるスタイルです。
例:基本給20万円×勤続年数10年=退職金200万円
(2) 固定金がベース
雇用主側が決めた固定金に勤続年数を掛けるスタイルです。
例:固定金20万円×勤続年数10年=退職金200万円
(3) 勤続年数がベース
雇用主側が勤続年数ごとに退職金を定めているスタイルです。
例:勤続年数5年=退職金100万円、勤続年数10年=退職金200万円
(4) 基本給+功績がベース
退職時の基本給に勤続年数と功績係数を掛けるスタイルです。
例:基本給20万円×勤続年数10年×功績係数1.5倍=退職金300万円
[※功績…職場に貢献した成果、雇用主側から見た評価などを指す]
退職金の相場はいくら?
看護師の退職金は勤続年数によって異なります。ほとんどの退職金の計算方法は勤続年数がキーになっており、年数が長くなればなるほど受取る金額は高くなると考えていいでしょう。看護師の平均年収は約470万円、平均月収は約33万円という調査結果があります。
このデータから、看護師の平均的な退職金を勤続年数ごとに見てみると次のようになります。
- 勤続5年未満…約20~100万円
- 勤続5~10年…約101~250万円
- 勤続10~20年…約251~600万円
- 勤続20~30年…約601~900万円
これを詳しく見てみると、勤続5年未満の看護師の平均的な基本給は20万円程度、勤続5年で100万円程度の退職金になるという計算です。ほとんどの場合、勤続3年未満の職員への退職金支給はないため、3年以降の看護師が対象となります。
勤続年数が長くなるとともに基本給もアップしていくため、勤続10年以上の看護師の基本給は25~30万円程度、退職金は250~600万円程度が相場です。
基本給には諸手当(残業・夜勤・通勤・住宅等)や社会保険料、所得税などは含まれません。自分自身の退社時に受取れる退職金を知りたい場合は、給与明細書の基本給の欄をチェックしてみてください。退職金の計算方法は病院やクリニックの就業規則に記載されていますので、併せて確認してみるとおおよその金額が分かるはずです。
退職金制度がない職場もあるので転職の際は要注意!
「病院やクリニックを辞めるときは退職金がもらえる」と思い込んでいる方はいませんか?退職金を当てにして職場を辞める決断をしたのに、実は勤務先には退職金制度がなかったという場合もあります。
退職金制度とは?
退職金は職場を辞める従業員が退職する際に、雇用主側(病院やクリニックなど雇い主)が支払うのが退職金(退職手当・退職一時金・退職慰労金)です。
制度という名称が用いられることが多いものの、法的に定められたものではありません。退職金の位置付けは雇用主側が長年勤続してくれた従業員に対し、慰労金として支払うという形になっています。
勤務先の就業規則に退職金の規定がある場合は、慰労金ではなく報酬(賃金)の後払いという解釈がされます。そこで雇用主側は就業規則にしたがって従業員に退職金を支払う義務が生じます。その金額も就業規則で定められているため、決まった金額を支給するということになるわけです。これが退職金制度です。
退職金の支給は義務?
退職金の支払いは法律で義務付けられているものではなく、支給するか否かは雇用者側の判断に任されています。そのため、民間企業に関しては退職金の支給義務はありません。
かつては国内の企業の多くは退職金制度を設けていましたが、時代の変化に伴って制度自体を廃止するところも増えてきています。退職金制度がなくても法律で罰せられるということはなく、あくまで雇用主側の判断に任せられているというわけです。
こうした理由から、病院やクリニックでも退職金制度を設けていないところがあります。一般的に大手総合病院や大規模なクリニックには制度があるケースが多いものの、必ずあるとは言い切れないのが現状です。中小規模のクリニックでは従業員の入れ替わりが多かったり、経営者の方針によって退職金制度がないところが多数見られます。
退職金はパートやバイトでも貰える?
退職金制度のある勤務先でも、すべての従業員が退職金を受取れるとは限りません。例えば就業規則に「退職金の支給は勤続3年以上の者に支給する」や「アルバイトやパートには支給しない」といった定めがあれば、受取れない人も出て来るわけです。
雇用主によっては規則に当てはまらない従業員に対しても、慰労金といった意味合いから少額の退職手当を支給するケースもあるものの、あくまでも雇用主の厚意という解釈になるでしょう。
そのような点から、退職金は基本的に「就業規則の定めにしたがう」と考えるべきです。「勤続3年以上の従業員」という規定があれば、3年に1日でも足りない人は退職金を受取ることはできません。「
正職員(正社員)のみ」と決められていれば、長年働いていてもパートやアルバイトには退職金が支給されないということになります。
退職金が多い職場はどこ?
看護師で退職金が多い職場をリストアップしてみました。
1.国立病院(国立病院機構)
国立病院で働く看護師は公務員扱いとみなされ、退職金も「公務員退職手当法」に則って支給されていました。2015年4月からは国立病院機構の独立行政法人化により一部の医療機関を除いて一般職員の公務員扱いはなくなったものの、退職金の額は従来と同程度のレベルを維持しているといわれています。
平成26年の実績では非管理職の看護師で勤続35年以上(定年退職)の場合、約1780万円の退職手当が受取れる計算です。同じ条件で看護部長の場合は約2410万円となっています。これは看護師の退職金として高レベルの金額といえるでしょう。
2.公立病院(都道府県立・市立)
公立病院の職員の看護師は地方公務員扱いになるため、退職金は「地方公務員法」に従って支払われます。支給額は都道府県立か市町村立かによって違いがあるものの、比較的高いレベルにあると考えていいでしょう。
都道府県立で一般職員の場合、退職金の相場は約1400万円、指定都市立の場合は約1900万円、市町村立の場合は約1800万円で、国立病院機構に次ぐ金額が期待できます。ポイントとなるのは都道府県立や市町村立より、人口50万以上の政令指定都市の方が高めであるという点です。ちなみに指定都市は全国に20カ所程度あります。
3.大手総合病院・私立大学病院
大手総合病院や私立大学病院の退職金は、病院の規模や利益の度合い、運営方針などによって金額が違ってきます。目安としては勤続3年で30万円程度、5年で50~100万円程度と考えていいでしょう。
以降、勤続年数が長くなるにしたがって、10年で250~300万円程度、20年で500~600万円程度、30年で800~900万円程度と増えていきます。高レベルの退職金を目指すなら、基本給が高い病院への転職がおすすめです。
4.その他の職場
国立・公立・大手病院以外の職場で退職金が多いのが、企業が運営する企業病院や社会保険病院、大手の高齢者介護施設や高級老人ホームなどです。いずれも勤務先によって差がありますので、基本給の金額を目安にしっかりと事前リサーチをしてください。
転職を考えている看護師にとって退職金の有無や金額は重要な問題です。一般には知ることができにくい求人先の退職金制度については、看護師専門の転職サイトに相談すると詳しい情報を得ることができます。求人先探しには転職サイトを上手に活用しましょう。
- 退職金の相場は5年未満で20~100万円
- 金額の計算方法は勤務先によって違ってくる
- ポイントとなるのは給料のうち基本給の金額
- 退職金が高いのは国立病院で2000万円超も…
- 正職員でないと退職金が出ない場合が多い
- 退職金制度がない勤務先もあるので要注意
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