看護師の話し方が「患者や家族に不快感を与えている」という例は意外に多く見られます。たとえ本人に悪意はなくても、相手を嫌な気持ちにさせるような話し方はトラブルの原因になりやすいので注意が必要です。
ここでは患者や家族を不快にさせる看護師の話し方の例と、相手に良い印象を与える話し方のコツについて紹介していきましょう。
不快に感じる看護師の話し方について
不快感を与えやすい看護師の話し方としては、「敬語を使わない」「タメ口で馴れ馴れしい」「言い方がキツイ」などがあります。こうした話し方について、患者や家族が病院にクレームを入れるというケースも見られます。
次に看護師の話し方でクレームになりやすい例を挙げていきます。
「です」「ます」等の敬語を使わない
看護師が患者や付添いの家族に対し、敬語を使わないで話すと不快に感じるという人も少なくないようです。敬語といっても「~いらっしゃいます」「~ございます」のような言い回しをする必要はありませんが、「~です」「~ます」といった相手に敬意を感じさせる言い方は必要になるでしょう。
敬語を使わなかったためにクレームが出やすいのは次のような言い方です。
――今日は天気がいいね!気分も良くなるでしょ?
――○○さん、体調はどう?もう、よくなった?
「タメ口」で馴れ馴れしく話す
タメ口とは同じ年齢の親しい相手に話すような友達口調の言い方を指します。患者や家族に対して親近感を持っているような場合、自分でも気づかずにタメ口になっていることがあるので注意が必要です。
年上の相手に対してのタメ口はNGですが、同年代や年下の相手の場合でも控えたほうが無難かもしれません。次のようなタメ口の言い方はクレームが出やすくなります。
――ご飯、食べちゃった?あ、まだなの?
――トイレ行きたいの?オッケー、いいよ!
幼い子供に話すような言い方をする
看護師の言い方でクレームが出やすいのが「年配の患者に幼い子供に対するように話す」という問題です。高齢の患者のなかには看護師の声が聞き取りにくいという人もいます。
間違いなく伝えたいという思いから、幼い子供に対するように話しかけてしまう看護師もいるようですが、クレームの対象になることが多いので注意しましょう。クレームが出やすい例は次のような言い回しです。
――お注射の時間よー!お手々出してね~!
――おばあちゃん、おしっこ行きましょ~!
「上から目線」で厳しい口調になる
上から目線とは、目上の優位な立場から話すような言い方のことを指します。話の内容や態度が尊大で偉そうに感じられた場合、患者や家族は不快と感じることが多いようです。
看護のプロという立場から、気づかないうちに上から目線にならないように注意する必要があるでしょう。次のような言い方は、上から目線と捉えられることがあります。
――このお薬は必ず飲むのよ、分かってますか!
――前も言いましたよね!もう忘れてるの?
ほかにも、「大声で怒鳴る」「口調がキツい」「早口で聞き取れない」などの場合や、「言い方が事務的」「返事が素っ気ない」「面倒くさそう」などの場合もクレームの対象となるようです。
現役看護師さん必見!話し方のコツとは
看護師の話し方ひとつで、患者や付添いの家族は好印象を持ったり不快に感じたりします。心をこめて看護をしているのに、話し方だけで悪印象を与えてしまうのは損ではないでしょうか。
特に世代の違う年配の患者さんに対しては、言葉づかいや話し方に留意する必要があります。次に、看護師が患者や家族に不快感を与えない話し方の3つのコツを紹介していきましょう。
(1) 相手を尊重した話し方をする
医療の現場で働く看護師はプロであるという自覚と責任感を持っています。そうしたプロ意識は大切なものですが、行き過ぎると「上から目線」になってしまうので注意が必要です。
相手に医学や看護の知識がないために理解が遅かったり見当外れの質問をしたりしたとしても、「教えてやる」「説明してやる」という雰囲気にならないように心掛けてください。
殊に年配の患者さんは人生の先輩ですから、相手を尊重し敬意を感じさせる言い方をするのがコツです。年配の患者さんに厳しい言い方をしたり、子供や若者に対するような話し方をすると、ご本人よりも家族の方が不快に感じるケースが多いようです。
「父にあんな言い方をするなんて…」「私の母は子供じゃないのよ」といった感想を持つ家族の方もいます。コミュニケーションを良好に保つためにも、相手を尊重した話し方を選ぶようにしましょう。
×避けたい話し方「前も言いましたよね!もう忘れてるの?」
○不快感のない話し方「前にも説明したと思いますが、念のためにもう一度…」
(2) 相手の話を聞く姿勢を見せる
看護師が患者さんや家族の方と会話を円滑に進めるコツは「相手の話や意見を聞く姿勢を見せる」という点にあります。
多くの人が看護師に対して不快に感じる原因が「話を聞こうとしない」「一方的に自分の主張をする」といった態度にあるからです。かりに相手の言おうとしていることが的外れであっても、まずは聞く姿勢を見せるようにしましょう。
年配の患者さんのなかには、看護師が自分の話を聞こうとしないと感じると「無視された」「馬鹿にされた」と思う人もいます。忙しくて話を聞く余裕がない場合でも、少しでも話を聞く意思を示すことが大切です。
相手の目をしっかり見てうなずきながら聞くようにすると「話を聞いてくれている」という安心感を与えることができます。そのうえで年配の方に対しては「○○さん、これは~~なんですよ」と穏やかに説明すると相手も納得してくれます。
×避けたい話し方「それは分かってますよ!でもダメなの!!」
○不快感のない話し方「本当にそうですね。でもこれは~~なんですよ」
(3) 一定の話し方・接し方を保つ
患者さんや家族の方からの看護師へのクレームで多いのが「その時々で態度が違う」「相手によって態度を変える」という問題です。看護師という仕事はハードワークであるため、心身の不調やストレスを感じている人も少なくありません。
特に緊急の業務があるときなどには、丁寧な対応ができないこともあるでしょう。しかし、そのような事情は患者さんや家族の方には伝わりにくく、不要な誤解を受けてしまう場合もあるようです。
看護師がこうした誤解を受けないためにも、常に一定の話し方や接し方を心掛ける必要があります。小さな子供さんは別として、相手の年齢によって言い方や態度を変えるとクレームの対象となることがあります。
同年代の相手だからといって馴れ馴れしい話し方をしたり、年配の相手だからといって必要以上に距離を取るような話し方は避けるようにしましょう。ポイントとなるのは一人の社会人としての程よい礼儀正しさと、看護師としての相手を思いやる気持ちです。
×避けたい話し方「馴れ馴れしい言い方」「若者言葉」「流行語」など
○不快感のない話し方「です、ますの敬語」「丁寧な言葉づかい」など
年配の方やシニア世代の方との話し方のコツ
年配の患者さんやシニアの患者さんに対して、「なかなか話が通じにくい」「会話が噛みあいにくい」と感じる看護師も少なくありません。その理由としては世代による価値観の違いや、これまでの社会経験の違いなどが挙げられるでしょう。
世代が違えばものの見方や感じ方が違うのは当然のことで、そのズレに苛立ったり腹を立てたりしても解決にはつながらないものです。相手の価値観や考え方を頭から否定するのではなく、「世代による違いはあるのだ」と理解することが大切になります。
次に年配の方やシニアの方と話すコツを紹介します。
会話は「ですます」調で
どんなに親しくなった患者さんでも、「ですます」を付けた敬語で話すようにしましょう。相手が親しげに話しかけてくる場合でも、基本的なラインは敬語であるという認識を持つと上手くいきます。敬語ではよそよそしいと感じるような場合は、笑顔や軽いボディタッチなどで親しさを示してみてください。
個人の考えを尊重する
年齢の離れた患者さんの場合、自分には理解しにくい価値観を持っていることもあります。例えば戦前生まれの方の価値観は、現代の若い世代のものとは大きく異なっている場合もあるでしょう。
価値観や考え方は人それぞれと認識し、むやみに否定せず「そうなんですか」「知りませんでした」「勉強になりました」と軽く受け流して深く追求しない姿勢も必要です。
相手のプライドを大切に
年配の患者さんやシニアの患者さんは、これまでの人生で積み上げてきたプライドを持っています。こちらが正しいとしても、「あらあら、また?」「いつも失敗するよね」「こんなこともできないなんて」など、相手のプライドを傷つけるような言い方はNGです。
できれば「私の説明が足りなかったのかもしれませんが…」など一歩譲る姿勢を見せてください。
声が伝わりにくい場合は
シニア世代の患者さんのなかには、看護師の声が聞き取りにくいという方もいます。加齢によって高い音が聞こえにくくなったり、音は聞こえていても内容が聞き取れないというケースが出てくるからです。
こうした場合、「大きな声でゆっくりハッキリ話す」という対処法が一般的ですが、あまり大声でゆっくり話すと伝わらないという説もあります。むしろ一定の大きさの声で淡々と話したほうが聞こえやすいといいますので、試してみてはどうでしょうか。
看護師が話し方で心得ておくべきこと
看護師の話し方でポイントとなるのが、患者や家族に不安感を与えないこと、安心して治療を受けてもらえるようにすることです。病気の治療中の人や付添いの家族は体調の悪さや今後の病状への不安感を抱えています。
人によっては看護師のちょっとした言葉で不快になったり、不安が大きくなってしまうこともあるようです。
そのためには、看護師は患者や家族に安心感を与え前向きになれる言葉を発信していくことが求められてきます。「大丈夫でしょうか?」と聞かれたときに、素っ気なく「大丈夫ですよ!」と答えるのではなく、「私たちが全力で看護しますから心配しないでください」「チームみんなで頑張っていますので安心してください」という話し方をすると信頼感を築くことができます。
話し方というのは言葉の内容だけでなく、言い方や声の調子、顔の表情、動作などでも違いが出てきます。看護師のほとんどは時間的に余裕がなく、心身共に疲れているといった状況で働いています。
そうした環境の下で患者の生命を預かる仕事をしているわけですから、ときには乱暴な言い方や素っ気ない話し方をしてしまうこともあるでしょう。しかし、その言い方ひとつで患者や家族に不快感や不安感を与えているとしたら、改善すべき余地があるのではないでしょうか。
- 基本は「ですます調」の敬語で話す
- 年配の方には敬意を持った言葉選びが必要
- 相手の話を聞く姿勢を見せると人間関係が上手くいく
- 「上から目線」は不快感を与えるので要注意
- 患者が安心して治療に専念できる言葉掛けをしよう
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