看護師が知っておくべきフィジカルアセスメント

フィジカルアセスメントとは



みなさんはフィジカルアセスメントという言葉をご存知でしょうか?フィジカルアセスメントとは「フィジカル(physical=肉体)+アセスメント(assessment=情報収集と判断)」という意味で、医師や看護師が直接体に触れることによって患者の症状を把握することをいいます。

問診

問診はフィジカルアセスメントのS情報(患者の主観情報)の範疇に属し、看護師がどのように患者から適切な情報を収集し判断するかが問われる項目のひとつです。

かりに患者が「頭痛がする」と訴えたとしても、すぐに直接体に触れてみたり検査を行なうのではなく、「どのような痛みですか?」「いつから痛みがありましたか?」と多角的に聞き取りを行なって情報収集を行ない総合的な判断を下す必要があります。

問診の7つのポイント:
「どこが?」「どのように?」「どの程度?」「いつから?」「どんなときに?」「どのくらいの期間?」「その他の症状はある?」

体温測定

大動脈の血液温度を測定し、患者の日常値や日内値と比較して問診はフィジカルアセスメントを行ないます。体温計は予測計・実測計・両方式を併用したもの、いずれを使用しても構いません。

測定部位に汗などがあれば清潔なガーゼやタオルで拭い、45度の角度で腋窩に体温計を挿し込んで測定を行なってください。もし対象者が肥満体であったりした場合は、挿入角度45度にこだわらず水平に挿し込んでもいいでしょう。

体温測定のポイント:
測定値の確認、患者の体温パターンとの比較、発熱因子のアセスメント、疾患徴候の観察、体温測定頻度のアセスメント

血圧測定

心臓の収縮期血圧と拡張期血圧を測定し、血圧値推移や日内変動と比較してフィジカルアセスメントを行ないます。測定部位に汗などがあれば清潔なガーゼやタオルで拭い、血圧計のマンシェットが指2本分くらいの余裕があるように装着して測定してください。

血圧測定のポイント:
収縮期・拡張期の測定値の確認、患者の血圧値パターンとの比較、変動因子のアセスメント、疾患徴候の観察

意識確認

患者の意識レベルを確認することで症状のフィジカルアセスメントを行ないます。まず、患者の視界に自分の顔を置き、相手に伝わる程度の大きさで声を掛けます(聴覚障害などが考えられる場合は耳元でしっかりと声掛けをしましょう)。

もし、声掛けをしても反応が見られなかったり、反応があっても薄い場合は体を揺するなどして反応を見ます。

意識確認のポイント:
声掛けなどの刺激による反応、意識レベル、瞳孔の左右の差、見当識障害の有無


看護師が日常的に行なうバイタルチェックもフィジカルアセスメントの一部です。学校で習った聴診や打診などの高度なチェック項目だけでなく、実際に日常的な看護業務で必要となる基本的なフィジカルみなさんはフィジカルアセスメントという言葉をご存知でしょうか?

フィジカルアセスメントとは「フィジカル(physical=肉体)+アセスメント(assessment=情報収集と判断)」という意味で、医師や看護師が直接体に触れることによって患者の症状を把握することをいいます。

その他のフィジカルアセスメント



かつては医師が患者の体に直接触れて症状判断をしたり、何らかの異常を早期発見しようとする行為はごく当たり前でした。しかし、医療検査機器が発達した現代では患者の検査はもっぱら機器に頼るようになり、医師が直接患者の体に触れる機会は大きく減少しています。

そこで昨今注目されているのが、看護師によるフィジカルアセスメントの重要性です。日常の看護業務でフィジカルアセスメントを上手く活用していきましょう。


呼吸音の聴診

比較的高い音である呼吸音の聴診には、聴診器のチェストピースの模型を使用するのが適しています(ベル型は心音など低音域の音の聴取に用います)。

シングルピースの聴診器で呼吸音を聴診する場合は、高音域の聴診のために強く押し当てないようにして用いましょう(強く押し当てると低音域しか聴診できません)。イヤーピースは挿入方向に注意し、耳にきちんとフィットしているかどうかを確認してください。

呼吸音の聴診のポイント:
「呼吸音の大きさ、強さ」「左右の差があるか?」「聴取部位の異常の有無」
「副雑音の部位と種類は?」「呼吸位層は吸気時か呼気時か?」「体位による差は?」


打診

患者の体の表面を軽く叩いて内部の状態を情報収集し判断するのが打診です。打診で分かる情報は皮膚の5~6センチ下までで、よく打診が行なわれるのは心臓のサイズ、肝臓のサイズと位置、横隔膜の位置、腹部膨満の原因、肺の含気の状態を判断するケースです。

打診のやり方は、まず打診部位に利き手ではないほうの中指を押し付け、次に利き手の手首のスナップを利かせながら中指の先で、皮膚に押し付けているほうの中指の関節の真上を2回程度叩きます。

打診のポイント:
鼓音(胃・腸管)…大きな太鼓を叩くような音
共鳴音(正常な肺)…中程度の音、空洞のような音
濁音(心臓・肝臓)…あまり大きくないソフトな音


脈拍の触診

脈拍は医療機器を使用しなくても触診を行なうことでカウントできます。医療器機が使用できない場合や患者に急変が見られない場合には脈拍触診によるフィジカルアセスメントが必要となります。

いざという場面であわてなくても済むように、基本となる脈拍触診の知識や技術を身に付けておくのは看護師として重要です。触診は示指・中指・薬指の3本を該当部位に軽く当て60秒程度測定して算出します。できれば左右の脈拍を触診し、拍数に差がないかどうかもチェックしましょう。

脈拍触診に最も適しているのは手首付近の橈骨動脈ですが、ほかにも上腕動脈や総頸動脈、大腿動脈などでもカウントすることができます。

上級レベルのフィジカルアセスメント



フィジカルアセスメントには、患者本人の訴えや説明など主観的な要素を聞き取る「S情報(Subjective Data)」と、患者の顔や表情、体温、脈拍、血圧など客観的な要素で判断する「O情報(Objective Data)」の2種類があります。

このS情報とO情報を組み合わせた総合判断がフィジカルアセスメントということになります。次に看護師が知っておきたい上級レベルのフィジカルアセスメントを紹介していきます。


腹部膨満

腹部にはさまざまな臓器があるため、触診や打診によるフィジカルアセスメントはむずかしいといわれています。お腹の張りなどを触診・打診してアセスメントをしなければならないときは、最初から結論を出そうとせず消去法で判断する必要があります。

腹部膨満の原因としては、1.ガス、2.便、3.脂肪、4.腹水、5.妊娠が挙げられますが、触診・打診で可能性の少ないものから絞っていくとアセスメントしやすいでしょう。

浮腫(むくみ)

むくみを訴える患者のアセスメントをするときは浮腫のある部位から判断をスタートします。顔・まぶたであれば腎炎や腎不全などの腎性浮腫、下肢であれば心不全などの心性浮腫、その他の部位であれば肝性浮腫や甲状腺機能低下症などの可能性があります。

もしごく一部分のみの局所性浮腫であれば、リンパ浮腫や静脈瘤障害、外傷による炎症性の浮腫という可能性も出てきます。

腰痛・背痛

腰背痛のアセスメントは1.緊急性の有無、2.原因の絞り込みの順に行ないます。

考えられる原因としては、ぎっくり腰やヘルニアなどの脊椎や整形外科系疾患、狭心症や尿路結石などの内臓系疾患、帯状疱疹(初期)や褥瘡などの皮膚疾患、胸部大動脈りゅうや腹部大動脈りゅうなどの血管系疾患が挙げられます。


なかでも心疾患や血管疾患は緊急性を要するものであり、素早い対応が求められるでしょう。なお、腰痛と背痛は区別がむずかしい部位ですので、患者の訴えに捉われるだけでなく柔軟な判断を下す必要があります。

めまい

原因が多岐にわたるめまいのフィジカルアセスメントは医師にとっても簡単なものではありません。めまいのアセスメントを行なうときは、1.種類、2.原因、3.緊急性の有無の順に情報を整理していきましょう。

まず、めまいの種類のうち、回転性(ぐるぐる回る)、浮動性(ふわふわする)、失神性(気が遠くなる)のいずれであるかのS情報を取得します。


次に原因のうち、末梢性(三半規管の障害)か中枢性(脳の異常)もしくはその他(発熱、貧血、血圧、薬剤の副作用)のいずれであるかを判断します。最後に特に緊急性が高い中枢性めまいの場合は、即刻医師に報告し判断を仰ぐようにしてください。


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