看護師の勤務先となる病院には、病院規模による種類のほか「公立病院か民間病院か」という区別があります。
公立と民間とでは、看護師の働く環境は大きく違っています。働く側(つまり看護師)としても、公立と民間病院でどっちがお得なのか気になるところです。
以下では、公立病院のメリット、デメリット、労働環境の実態について確認したうえで、公立と民間どちらの病院がどう有利なのかをチェックしていきます。
看護師の転職先、公立病院のメリット
1.公務員としての社会的身分
市立、県立、都立病院など自治体経営の公立病院に就職すると、公務員試験を受けずして自動的に公務員(各自治体の職員)となることができます(ただし、病院としての採用試験はあります)。
公務員には解雇や倒産の心配がほとんどなく、民間企業に勤めるよりも雇用が安定し、社会的な信用が厚くなります。ローン審査などでもより信用が得られやすくなるといいます。
2.福利厚生が充実、収入の保証
公立病院では福利厚生が充実しています。年金や退職金制度がしっかりしており、年休が多く、時間給が取れる場合もあります。ただしせっかくの休日を取得できる環境かどうかは、病院次第のようです。
近年ではその上昇幅が少なくなっているとはいえ、勤続するほど給料が上がっていくのも公立病院の特徴です。そのため長く勤めるほど十分な収入を期待できます。生計が安定するという理由で、両親から公立病院への就職を勧められる看護師もいます。
3.労働環境・学習環境の充実度
公立病院から民間病院へ転職した看護師からは、「仕事環境の違い、ギャップの大きさに驚いた」という声がよく聞かれます。
公立病院の方がカルテの扱いや、医師や技師と看護師との業務分担がしっかりしている場合が多くなります。逆に規模の小さな民間病院では、医師が行うべき医療行為を当然のように看護師が行っているという現実があり、先のような転職時のギャップが生まれるのです。
医療施設がしっかりした環境であること、研修や勉強会が多くスキルアップできる環境がメリットとなります。また新卒採用者数が多く、同期の看護師同士で励ましあえることが嬉しいという声もあります。
看護師の転職先、公立病院のデメリット
1.お役所的で融通が利きにくい
公的機関であり施設規模も大きいことから、公立病院は融通が利かないと感じられることが多くなります。
例えばシフト希望は出しにくく、出せても1ヶ月に3日までだったり、当然ですが副業は厳禁など、規定が厳しく、このような姿勢を研修の段階でしっかりとたたきこまれます(民間病院でも「副業禁止」の職場はありますが、公立病院の方が断然厳しいです)。
比較的自由に発言でき、スタッフ同士での融通も利かせやすい民間病院とは異なり、「風通しが悪い」と感じる方もいるでしょう。
2.時間外の業務が多い
公立病院はサービス残業が多い傾向があります。出勤は始業の30分~1時間前、時間外の患者さん対応でも超勤がつかないことが珍しくありません。勤務時間の長さは、子供が小さい看護師にとっては厳しい環境といえます。
ほぼ強制参加の勉強会、研修、委員会や会議などが多く、これらは時間外や休日にも行われます。「自由参加」であるからといって勉強会に出席していないと、上司から叱られるケースもあります。
3.問題のある患者さんが多いことも
「医療スタッフへの暴言お断り」といった姿勢を取ることができる民間病院とは違い、公的な機関である自治体の病院では、様々な患者さんを受け入れます。問題があるようなクセのある患者さんや、変わった患者さん、他の病院では受け入れを断られた患者さんなどです。
看護師はモンスターペイシェントから理不尽な要求や扱いを受けることもあり、ある程度受け流して対応できないと、ストレスが大きくなってしまう可能性があります。
4.お給料が安い
先ほど、公立病院のメリットとして「長く勤務すると公立病院がお給料でも有利」と説明しました。ですがこれは、公立病院の方が民間よりお給料良い、ということではありません。
実は新卒で入職してから最初の10年ほどは、民間病院の方がお給料は上です。これが20年ほど勤務するとなると、公立と民間でお給料が逆転します。理由は先ほど説明した通り、公立の場合は徐々にでもお給料が上がってくるからです。
<公立病院のメリット>
- 公務員としての社会的信頼
- 福利厚生が充実している
- 収入、雇用の安定している
- 医療施設がしっかりしている
- 学習機会が多く、スキルアップできる環境
<公立病院のデメリット>
- なにかとお役所体質(融通がきかない)
- 時間外業務が多い(とにかくハードワーク)
- モンスターペイシェント(患者)の対応もある
- 最初の10年ほどは給料が安い
労働環境が過酷な地方公立病院の例
看護師向けの情報掲示板を読むと、公立病院は、一部の看護師や看護師の家族から人気が高いことが分かります。上で書いた通り、「公務員」ブランドのおかげもあるでしょう。
ですが、一部の地方公立病院では、相当過酷な労働環境になっているケースもあります。以下で見ていきます。
3ヶ月超え患者の受け皿に
診療報酬のルールにより、入院が90日=3ヶ月を超えると基本料金が安くなります。つまり3ヶ月以上の長期入院の患者さんが多くなると、病院の採算が悪くなってしまうということです。
地方の公立病院は、このような理由から民間病院を強制的に退院させられた患者さんの受け皿になるケースが少なくありません。病棟患者の半数以上が寝たきりの高齢者といった状況になってしまい、「老人ホーム勤務と変わらない」と感じるという看護師もいるといいます。
過酷な状況のしわ寄せが看護師に
このような病院で、看護師は患者さんのオムツ交換や痰の吸引、清拭などに追われ、他の看護業務がどんどん後回しになっていきます。地方には専門医が少ないこと、医師不足の現状から、適切な指示ももらえず不安なまま業務を行わなければなりません。
ハードな勤務状況はさらなる看護師不足を招き、3交代で夜勤が月に10~12回という状況になったり、看護師配置基準をクリアするために病院側が看護師数を偽装することもあるそうです。全ての公立病院がそうではありませんが、このような過酷な勤務状況が現実に存在します。
公立病院と民間病院、どちらが得なの?
公立病院と民間病院のどちらが合っているのかは、看護師の環境や希望する働き方によって異なります。いくつかの面から、有利なのはどちらかを確認してみましょう。
初めての就職先には公立病院が有利
公立病院のメリットとして教育体制の充実が挙げられます。新卒での就職時にしっかりと研修してもらえることは、その後のキャリアにとって大きなプラスになります。
いったん民間病院に勤め公立病院への転職を希望しても、求人機会が比較的少なく、入職はより難しくなります。これらの点から、初めての就職先として公立病院を選ぶのはおすすめといえます。
10年以上の勤務でないなら、民間病院が有利
以前は給与条件の良さが魅力だった公務員ですが、近年では給与条件も昇給幅もより低くなる傾向があります。とはいえ勤続年数によってわずかずつでも昇給があること、退職金・年金額がしっかりしている点は魅力です。
一方、民間病院の給与は施設によってばらつきがあり、場合によって公立病院よりも高収入を望めますが、昇給の機会は少なく退職金もそれほどは期待できません。
したがって、5~10年程度で集中して稼ぎたいという時には民間病院で条件のいいところを選んだ方が良く、より長く(それこそ、転職なしでずっと公立病院で働き続けるほど)勤めて全体の収入額を上げたいときには公立病院が有利です。
スキルアップを目指すなら公立病院が得
公立病院で働く看護師は、より高いスキルを身につけることができると言われます。これは、公立病院には依然として厳しい看護規定があり、これに沿ってしっかりと教育を受けられる環境があるためです。
診療科目が多く、より幅広い医療知識やスキルを身につけることも可能になります。そのため、民間病院で経験を積んだ看護師も、公立病院への転職時には新人同様に教育を受けることがあるのです。
民間病院では、公立病院ほどの教育体制は整っていない場合もあり、民間病院でのスキルアップを希望するのであれば、その準備がある求人を見極める必要があるでしょう。
公立だからいい職場とは限らない
公立と民間どちらが有利かは、病院の立地にも左右されます。都心部では、条件の良い民間病院が多いために公立病院のメリットが感じられにくい一方で、地方では民間病院の待遇が低く、公立病院の安定感が魅力になる場合があります。
ただし施設によっては、先ほど説明した通り、長期入院患者の受け皿となって、看護師が過酷な環境で働かざるを得ない公立病院もあるのです。公立病院だから安心だろう、と思い込まずに、自分の目でしっかりと求人を見極めることが大切です。
求人先の環境を知りたいときには、職場見学のほか転職サイトのエージェントを利用するという方法もあります。
- 公立病院では社会的信用や福利厚生、環境面のメリット
- 融通が利きにくい、時間外業務が多いなどのデメリット
- 長期入院患者が多く過酷な勤務をこなす地方公立病院もある
- 初めての就職やスキルアップには公立病院が有利
- 短期間で高収入を得るには民間病院が適している
- 公立だからいい職場とは限らず、自分の目で見極めることが大切
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