看護師の転職活動で何を活用したのかを聞くと、かなりの割合で回答があるのが「ハローワーク」です。ハローワークは公的機関が運用しているだけに、看護師の間からも信頼感や安心感があります。
ですが、看護師にとってハローワークは、本当に転職に最適な手段なのでしょうか?
ここでは、看護師の転職支援サービスとしてハローワークと同じくらい使われている、看護師転職支援サイトと比較して、ハローワークのメリット・デメリットに迫りたいと思います。
ハローワークって何?
ハローワークという言葉は頻繁に耳にしますが、まずハローワークについて説明しましょう。
ハローワークとは正式名称は「公共職業安定所」で、仕事の紹介(仕事を探す方向け)や雇用保険の手続き、職業訓練、転職活動の相談、人材の紹介(雇用者向け)などが主な役割です。
運営は国(厳密には公的職業安定組織)ですが、管轄は厚生労働省の各都道府県の労働局になります。簡単に言うと、公的機関によるサービスということですね。
<関連サイト>
・ウキペディア、ハローワーク
ハローワークの利用で一番多いのは、恐らく雇用保険の申請手続きでしょう。転職・失業された方で休職期間中に失業保険が欲しいと思った方は、ハローワークに訪れているはずです。
その他、上でも書いた通り、色々なサービスを提供していますが、以下では転職支援サービスに限定して特徴を紹介します。
ハローワークの支援サービスの特徴は?
1.無料で仕事の紹介をしてもらえる
一つ目の特徴は、仕事を紹介してもらうのにお金が掛からないということです。つまり、時間が許す限り、いくらでも利用できるということです。
尤も、実際にハローワークで登録されている求人に応募するには、ハローワークの紹介状が必要になるので、一遍に10も20も受けることはできません。
2.現住所以外の地域の求人を紹介してもらえる
時々勘違いしている方もいるのですが、ハローワークの求人は自分の現住所以外でも紹介してもらうことが可能です。
たとえば現在は東京に住んでいるけど、夫の転勤の関係で数か月後に北海道に引っ越しをすることが決まっている看護師の方が、ハローワークで北海道の看護師求人を探すことは可能です。
ただし、先ほども書いた通り、ハローワークの求人に応募するには紹介状が必要で、これはハローワークの窓口まで行かないと貰えません。
3.ネットでの仕事検索も可能
昔はハローワークの求人といえば、実際に近所のハローワークまで行って、端末を使って調べる必要がありました。ですが今では、ネットからでも求人情報の検索が可能です。
実際に気になった求人を見つけてから紹介状を貰いにハローワークに行けばよいので、転職活動の手間をかなり軽減できます。
ちなみにですが、上で挙げた1~3の特徴は、民間企業が運営する看護師転職サイトにも当てはまります。
看護師転職サイトも無料で利用できますし、他地域の求人を探すことができますし、ネットでの検索も可能です(ただし、未公開情報については登録が必要です)。
では、ハローワークだけにある転職支援サービスの特徴は何があるでしょうか?以下では、看護師がハローワークを使うメリットを紹介します。
看護師がハローワークを使うメリットは?
1.ハローワークにしかない求人がある
看護師転職サイトにしかない求人情報があるのですが、それとは逆にハローワークにしかない求人情報もあります。ですが、ハローワークにしかない求人とは、どういうことでしょうか?
まず、看護師専門の転職支援サイトは勤務先に看護師を紹介し、実際に転職が決まると「成功報酬」を勤務先からもらうことができます。
看護師にとって転職サイトの利用が無料なのは、そういう理由からです。
ですが、病院やクリニック、その他介護施設などの中には、経営が苦しかったり、転職会社に成功報酬を支払いたくないという理由で、民間の転職サイトに求人を出さない勤務先もあります。
そうした勤務先は、看護師を募集する際には直接募集を掛けるかハローワークで求人を掛けます。つまりハローワークでしか見つけられない看護師求人は確かにあり、これはハローワークを利用する大きなメリットになります。
2.日本全国どこでもサービスを受けられる
2つ目のメリットは、全国どこでも転職支援サービスが受けられる点です。そんなの民間の転職支援会社も同じでしょ?と思われるかもしれませんが、違います。
民間の転職会社が転職支援で強いのは、首都圏や都市部で、要は人口の多い都市が対象です。逆に、九州や四国・東北の中でも辺鄙(へんぴ)な地域では、サービスが手薄になることが少なくありません。
ですがハローワークは全国一律に拠点があり、地方でも都市部と同じ転職支援サービスを受けられます。もちろん、地方の看護師求人は都市部よりも条件面で劣るので、ハローワークだから好条件の求人が見つかるとは限りません。
とはいえ、田舎でも都会と同じサービスを受けられるハローワークは、その点でも魅力的です。
3.変な求人先を「誘導」されない
看護師転職支援会社でも大手は良心的な会社が多く、看護師の悩みを真摯に聞いたうえで希望にあった求人先を紹介してくれます(逆に中小の会社だと、ブラックな求人先もガンガン紹介してきます)。
ですが、民間の転職会社は転職サービスが成功報酬であるという性格上、転職希望者の意向を無視した求人を紹介する担当者も中にはいます。
もちろん、こうした担当者はごく一部ですが、確かに存在しますし、これが転職支援会社の評判を落とす一因になっています。転職支援会社に全く希望に反する求人を紹介された、なんて経験のある看護師も時々います。
ですが、ハローワークは公共サービスですが、そうしたブラックな職場を紹介しても職員の利益になりません。つまり、ハローワークでブラックの求人先を積極的に薦められることはない、ということです。
実際、転職支援会社で嫌な思いをしたからという理由で、その後の転職活動ではハローワークしか使ってない看護師もいるほどです。
- 1.ハローワークにしかない求人がある
- 2.日本全国どこでもサービスを受けられる
- 3.変な求人先を「誘導」されない
以上、看護師の転職支援サービスとしてのハローワークのメリットについて見てきました。ここだけ見ると、ハローワークが素晴らしいサービスと思う方がほとんどのはずです。
ですが、ハローワークを活用したおかげで転職活動に失敗したと感じる看護師もたくさんいるのも事実です。
以下では、ハローワークを活用することのデメリットについて紹介します。
ハローワークのデメリットについて
1.年齢制限の問題
一つには、ハローワークやナースバンクといった公共の職業紹介機関では、募集欄に年齢制限を書くことができません。これは雇用対策法のためです。
これは、労働者を守る法律として施行されたものですが、実際には問題も指摘されています。
一番の問題は、募集要項には年齢不問となっているのに、たとえば雇用主側が「30代前半までの看護師しか雇いたくない」と考えていたら、30代後半以降の看護師がいくら頑張って応募しても、採用される見込みが全くないことです。
おかげで、看護師は転職活動で余計な時間を使うことになり、ストレスを抱えます。
もちろん、転職支援会社ではこうした問題はなく、担当者から勤務先が希望する年齢(逆に、何歳なら転職の見込みがないか)など教えてもらえるため、効率よく転職活動ができます。
2.ブラックの職場を排除できない
ハローワークのデメリット2点目は、いわゆる「ブラック」な勤務先が多数まぎれこんでいることです。
先ほど、ハローワークではブラックの職場を積極的に薦められることはないと書きました。それは事実なのですが、ではハローワークの求人リストに「ブラックな勤務先」がないかというと、それは違います。
ブラックな病院なりクリニックが求人を載せたいと言えば、ハローワークはたとえブラックな職場と知っていても拒否できないのです(注)。
「公共機関ならブラックの職場を紹介する訳がない」と勘違いしている方もいるのですが、ブラックでもホワイトでもグレーでも、どんな求人先でも中立に紹介するのがハローワークの仕事です。
もちろん、明らかに給料が安いといったブラックな職場はハローワークの求人条件を見れば確認できるので、そこで引っかかる人はいないでしょう。問題は給与などの条件面が良い「ブラック」な職場の場合です。
たとえば、お給料は地域の相場よりいいけど、勤務実態はどブラックで、離職率が非常に高い。病院内の人員も常に足らず、いつも求人募集を掛けている。
もし転職支援会社にこうした求人があっても、良心的な転職エージェントなら決して薦めないでしょう。
ですが、ハローワークでは募集要項に書いてある情報しか分からず、あとは面接や職場見学などで直接聞き出すしかありません。
(注):ただしこの問題は、公共機関がブラックな職場を紹介するのはおかしいという批判にさらされることになりました。
このため、ブラックな職場はハローワークの求人リストから削除できるようにする、という方向で検討は進んでいます。ですが、この制度が施行されるのはまだ先のようです。
3.忙しい看護師には使い勝手が悪い
ハローワークのデメリットの3つ目は、忙しい看護師には転職活動において使い勝手がよくないことです。まず、ハローワークの営業時間は、原則平日8:30~17:15です。
もちろん、これ以外の時間帯でも求人情報を見ることはできますが、紹介状をもらうためにはこの時間帯にハローワークまで行く必要があります。これは、働いている看護師からすると、かなりの負担です。
ハローワークでも、希望する勤務条件を担当者に伝えれば、条件に合った求人先を紹介してくれます。
ですがハローワークのサポートはここまでで、自分のキャリアプランにとってなぜその職場がよいのか、職場の人間関係はどうか、すでにその職場に転職した看護師の意見は?といった情報は、一切教えてくれません(というか、担当者には分かりません)。
すでに退職して時間に余裕がある看護師ならハローワークでもよいかもしれませんが、それでも時間をかなり非効率に使うことは覚悟する必要があります。
<関連サイト>
・全国ハローワークの所在案内・営業時間
4.手厚い転職サポートは期待できない
これは、先ほどの話とも関係するのですが、看護師に対する転職サポートが足りないのがハローワークの弱みです。たとえば、ある看護師がより給与の高い転職先を希望しているとします。
希望にマッチする転職先はあるのですが、明らかにその看護師が長く働けるような職場でないとします。
その場合、良心的なエージェントならその看護師の気分を害してでも、その転職に反対するでしょう。
つまり看護師の言うことをホイホイ聞くのではなく、その看護師のことを真剣に考え、目先の利益ではなく将来的に有利な転職となるよう提案するのが転職支援会社の役割です。
ですが、ハローワークにはこうした役割は期待できません。
また、転職支援会社では面接対策や履歴書作成の指導も行います。ですが、ハローワークではこうした転職活動のサポートも不十分です。
5.転職後のサポートも期待できない
看護師転職にまつわるトラブルで多いのが、「実際に働いてみると、事前に聞いていた条件と違う」というトラブルです。
残業はほとんどないと聞いていたのに、1日あたり平均2~3時間は残業をさせられるとか、休憩時間が事前の説明と違ってかなり短いとか、「経験不足」などの理由で初勤務時に突然給料を下げられたり、などです。
こういう時に上司と戦うのがかなり勇気のいることで、大抵は泣き寝入りすることがほとんどです。こうしたトラブルは転職会社やハローワークを通さず勤務先に直接応募した時に起こりがちですが、ハローワーク経由でも起こりえます。
ハローワークで事前に聞いていた条件と違うという場合、当然ハローワークに抗議することを考えると思います。では、ハローワークがその勤務先に抗議して勤務条件を変えさせるかと言えば、そんなことはしません。
せいぜい、勤務先に聞き込み調査をして、ハローワークに掲載中の応募条件を変更させる程度です。繰り返しになりますが、ハローワークは仕事の紹介をするところではありますが、労使問題を取り扱う機関ではないのです。
一方で転職支援会社であれば、こうした問題は原則起きません。それは、面接して勤務先から内定をもらった後に、労働契約書を転職支援会社経由で提出してもらえるからです。
労働契約書とは、簡単に言うと勤務条件が記載された紙のことで、勤務先としてもその条件で雇用することを強制されます。
もちろん、転職会社を経由しても、こうした問題を完全に防げるとは限りません。たとえば、人間関係が聞いていたより悪いとか、休憩時間が意外に少ないなどの問題が起きることも時々はあります。
ですが、勤務実態が労働契約書の内容が違うようなら転職支援会社から勤務先に抗議してもらうこともできます。転職後のトラブルをゼロにすることはできないかもしれませんが、転職後のサポートは転職支援会社の方がずっと頼りになります。
ちなみに、ハローワーク経由でも転職後のトラブルを少なくする方法はあります。それは勤務する前に、勤務先から雇用契約書を提出してもらうことです。
こうすれば、ある程度はトラブルを抑えることはできます。一番やっていけないのは、口約束で条件を決めて、勤務後に雇用契約書を出してもらうこと(クリニックなど勤務先によっては、雇用契約書が存在しないところもあります)です。
- 1.年齢制限の問題
- 2.ブラックの職場を排除できない
- 3.忙しい看護師には使い勝手が悪い
- 4.手厚い転職サポートは期待できない
- 5.転職後のサポートも期待できない
看護師転職サイトとハローワークの上手な使い方は?
看護師転職支援会社とハローワークの違いを見てきましたが、いかがだったでしょうか?以下では、転職サイトとハローワークの強み・弱みを表でまとめました。
ハローワーク | 看護師転職サイト | |
---|---|---|
利用料 | 無料 | 無料 |
ネットでの求人検索 | 可能 | 可能 |
対応地域 | 全国対応 | 地方の一部は対応できない |
求人情報の詳しさ | 不十分 | 十分 |
転職サポート | 期待できない | 期待できる |
転職後のサポート | 期待できない | 期待できる |
その他メリット | ||
その他デメリット |
結局、ハローワークと転職サイトのどっちを使えばいいの?と思う方もいると思います。もし時間に余裕のある方なら両方活用するとよいと思います。上で見たとおり、それぞれに利点があるからです。
ただ、転職活動に使う時間やエネルギーがないという方は、転職サイトに絞った方がいいかもしれません。また、九州・四国・東北の中でも不便な場所にお住まいの方は、ハローワークを積極的に活用するとよいでしょう。
以上、まとめです。
- 看護師の転職活動では転職サイトの方が全般的に有利
- 時間に余裕があるなら、転職サイトとハローワークを両方活用すべき
- 時間のない人は、転職サイトを中心に転職活動すべき
- (九州・四国・東北など)地方の人は、ハローワークを活用すべき
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