以前は「皮膚泌尿器科」であり、「泌尿器科」という診療科が認められてからそれほど年数がたっていないこともあり、比較的認知度が低い診療科です。また勤務先として、若い女性看護師からは敬遠されがちな科でもあります。
看護業界では珍しく、女性よりも男性が多く活躍する泌尿器科への勤務について、科の特徴や看護師の仕事、メリットとデメリット、転職する場合の注意点について確認していきましょう。
泌尿器科について
診療する症状、患者さんの特徴
泌尿器科では、副腎、腎臓、尿管、尿道、膀胱、前立腺、ペニス、睾丸など、排尿やホルモン分泌に関わる臓器を診療対象とします。症状としては、前立腺の炎症やガン、肥大症、腎盂腎炎、腎細胞ガン、尿道炎、尿道狭窄、包茎、膀胱炎、睾丸腫瘍や性病です。
内科治療のほか、外科治療を要する症状が多いのが特徴的です。女性が陰部の異常を感じたときには婦人科を受診することが多いため、患者さんの男女比はだいたい8:2で、なかでも中高年の男性が多くなっています。
レベルの高い外科治療を要する科でありながら、男性器を診療対象としているために女性看護師からの人気が低く、精神科と並んで男性看護師が多く活躍する診療科です。
泌尿器科で働く看護師の仕事、役割は?
泌尿器科の看護師の仕事
泌尿器科の看護師の仕事では、患者さんの受付や案内、診療時の介助、処置、手術の介助、術後ケアなどがメインになります。
排泄に関わるケアが多いので、専門的な知識や技術だけでなく、患者さんへの誠実な姿勢や性器に対しても動じずに落ち着いて対処できる冷静さが必要です。
泌尿器の治療でよく行われる性器周辺の剃毛は、看護師の仕事のひとつです。陰部を傷つけては大変なので慎重に行わねばならない作業ですが、慣れるまでは大変ですし、初めは抵抗を感じる看護師は多いといいます。
手術では、患者さんへの負担を軽減する内視鏡やロボットを使用するところも増えており、施設によってはそれらの機器の準備や扱い方を学びます。
患者さんの羞恥心を取り払う
男性でも女性でも、泌尿器を診察してもらうのは恥ずかしいと感じるものです。女性患者さんでは、泌尿器科に抵抗があったが女性看護師がいるのを確認して、勇気を出して受診したという方もいます。
治療に積極的になれなかったり、ためらいのある患者さんの気持ちを理解し、適切な治療を受けられるように促すのは、泌尿器科看護師の大切な役割です。
患者さんの気持ちを汲みとる
高齢化の進行とともに前立腺や腎臓、膀胱のがん患者さんが増えてきており、回復が難しい方もいます。性同一性障害を扱う病院では、患者さんの深刻な悩みに対峙することになります。これらのケースでは、患者さんの希望や医師に寄り添う姿勢が求められます。
さらに泌尿器科で働く女性看護師の悩みとなるのが、患者さんからセクハラまがいの言葉をかけられたりセクハラ行為を受ける問題です。
確信犯的にそのようなことをする患者さんもいますが、一方で治療の恥ずかしさや不安からそのような言葉や行為をしてしまっているケースもあります。上司に相談したり、患者さんの気持ちを考えながら、冷静に対処する必要があるでしょう。
泌尿器科で働くメリット・デメリット
メリット
スタッフ同士の対立が少ない
泌尿器科は男性看護師やベテラン女性看護師が多いことから、人間関係がこじれることが少なく、さっぱりした雰囲気の中で働けることが多いといいます。転職先に求める条件として「人間関係の良さ」を求める看護師にとっては嬉しいですね。
クリニック勤務の魅力である「心身のゆとり」
施設によりますが、泌尿器科求人の多くは病床の無いクリニックなので、夜勤がなく週末に休めるところが多くなります。こうして家庭と仕事を両立させやすいのは、看護師にとって大きなメリットです。
男性看護師が活躍できる
患者さんに男性が多く、看護の性質上男性看護師を希望する患者さんが多いこと、同性として患者さんの気持ちを理解しやすいことから、男性看護師が多く活躍している診療科です。
デメリット
精神的負担が大きい
若い女性看護師では、看護の一環とはいえ男性器に触れたり陰毛を剃るといった業務や、患者さんからのセクハラが精神的負担になることがあります。既婚者やベテランの看護師であれば落ち着いて対処することも可能ですが、若く経験の少ない看護師には難しい診療科と言えます。
性病治療などでは強い悪臭を我慢しなければならないシーンもあり、これがトラウマになる場合があります。
総合的なキャリアアップは難しい
泌尿器科の専門的な知識やスキルは身につきますが、後に活かせるような総合的キャリアを身につけるのは難しくなります。同じ泌尿器科でも内科や人工透析科などを併設する施設を選ぶと、スキルの幅を広げることが可能です。
給与は低め
泌尿器科求人の多くがクリニックであることから、夜勤手当がなく、収入は抑えられます。総合病院であれば夜勤ありの泌尿器科求人もありますが、夜勤回数はそれほど多くなかったり、求人数そのものが少なくなります。
小規模医院やクリニックであっても、応募が集まりにくい施設や人工透析を行うところでは、給与設定を高めに設定していることがあります。そのような求人を探してみるのも一つの方法です。
パート、アルバイト採用が多い
クリニックや医院からの求人では、正規雇用よりもパート・アルバイトの非正規雇用が多くなります。育児や介護のため家庭優先で働きたいという場合には好都合ですが、看護師としてバリバリ働きたいという方にとってはデメリットとなります。
非正規でも看護師なので時給は高めですが、ボーナスはないところが多く、交通費が出ない場合などもあるので、条件を詳しく確認することが大事です。
泌尿器科への転職、注意点は?
先に述べたように、男性器を処置対象にすることへの抵抗やセクハラの可能性などから、若い女性看護師にとってはなかなか難しい職場です。転職時のキャリアや状況と合わせて、看護師が務まるかどうか、まずはよく検討してください。
施設によって仕事内容や条件がさまざま
泌尿器科での看護師求人の多くはクリニックです。総合病院や大学病院からの求人であっても、外来のみで夜勤は少ないことがあります。そのため夜勤の有無、1か月あたりの夜勤日数などはしっかり確認し、希望に合うかを確認します。
クリニックでは内科治療が多く、外科治療が必要な場合には総合病院を紹介することが多くなりますが、なかには手術に対応するクリニックもあります。どのような症状や治療法を扱うのか、手術の有無や件数も確認しておくと安心です。
未経験の場合は教育制度もチェック
泌尿器科で働くのに特別なスキルは必要ないとはいえ、身につけるべき専門知識やスキルの多い職場なので、未経験で転職する際には教育体制、サポート体制が整っていると嬉しいですね。
実際にどのような教育体制がとられているのか、夜勤はどのぐらいの頻度か、手当の詳細や対応する業務範囲など、求人先について詳しく知りたいときには看護師専門の転職サイトを利用します。
エージェントに色々と質問したり、希望にぴったり合う求人を探すのにも便利ですよ。もちろん、自分の目で見学して、職場の雰囲気を確認しておくことも大切です。
- 患者数も看護師数でも、男性が多い診療科
- 基本的な看護のほか性器周辺の剃毛や排泄ケアが多い
- 患者さんの羞恥心や心情を思いやる姿勢が大切
- 精神的負担が大きいこと、バリバリ働くのが難しいのがデメリット
- 施設により看護内容や勤務条件が色々なので、事前にしっかりチェック
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