看護師の転職は決して珍しいものではなく、逆に一度も経験がないという方は珍しいと言われます。離職率を見てみると、常勤で約10%、夜勤が多い病院では実に13%と、他の業種に比べ高い確率で離職があります。
看護師はどんな理由で転職を決断しているのか、なかでも近年問題となっているパワハラによる転職について、少し掘り下げてみていきましょう。
目次
看護師の転職理由について
職場に申し出る理由としては、結婚や出産、子育てや親の介護、配偶者の転勤やスキルアップのため、といった角が立ちにくい理由が挙げられますが、多くの場合にはその背景にいくつかの「本当の理由」が隠されています。
仕事がキツい
退職理由の調査で上位に入るのが「心身の健康状態の悪化」であり、その背景には、日常的となっている看護師の激務があります。
看護の仕事は計画的に進めるのが難しく、検温や介助、オペの準備、急変やナースコール対応など、いくつもの業務をその時々で優先順位をつけてこなす必要があります。
チームメンバーそれぞれの業務量は多く幅広いものとなり、しかも人命にかかわるため緊張を伴います。激務からの辞職、そしてさらに人手が不足して激務に・・・という悪循環は、珍しいものではありません。
夜勤・残業の多さも、シフトをハードなものにし、激務の疲労をさらに強める一因です。勤務の合間に勉強会やレポートの提出、研修なども入ってきて、休日をつぶさざるを得ないこともあります。
上司に相談したり配置換えを申し出ることも可能ですが、それでも解決できない場合、より負担の少ない職場や施設への転職を検討する必要があります。
給与アップ
給与アップを理由とした転職は、幅広い年代で見られます。先に挙げたような激務に見合う給与をもらえていない、と感じている看護師は多くいます。
看護師は昇給機会が少なく、頑張ってスキルを上げても収入がアップしていかないことも、この転職理由を増やす原因となっており、より良い給与条件の施設への転職が検討されています。
人間関係をリセットしたい
ナースステーションや病棟といった閉じられた空間で、たくさんの女性が働く看護師の仕事では、どうしても衝突やトラブルが多くなります。
こじらせてしまうと回復が難しいうえ、嫌でも同じ職場で顔を合わせなければなりません。転職による人間関係のリセットは可能ですが、転職先でも同じ状況になる可能性はあります。
求人選びの際にいかに自分に合った、人間関係の良い職場を選ぶかがポイントになり、このような情報は転職サイトのエージェントを通じて確認することができます。
キャリアアップ
研修や勉強会の開催頻度・内容の充実は、施設によって差が大きいのが現状です。「教育体制を整えたところ離職率が低下した」というデータがあり、看護師が教育体制の充実を望んでいることが分かります。
資格取得のために支援制度がある職場へと移る必要など、キャリアップを理由にした転職が見られます。
生活環境の変化
家事や育児、介護に時間を割く必要が生じたり、引越しをすることになったなど、環境の変化をきっかけに転職をすることがあります。
- ハード過ぎる仕事を理由にした転職は多い
- 人間関係の悩みを繰り返さないため転職サイトを活用
- 仕事に見合った給与、充実した研修を求めての転職もある
- 出産、介護、住居など環境の変化がきっかけに
以下では、ここで挙げた看護師の転職理由について詳しく紹介していますので、合わせてご覧ください。
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看護師の転職理由でパワハラ問題が急増中
看護師の転職理由で上位に入る「人間関係の悩み」のなかでも、近年深刻化が問題となっているのが「パワハラ」です。社会全体の傾向ですが、看護師の現場でも理不尽ないじめや陰口で深刻なダメージを受ける方が少なくありません。
パワハラとは
パワーハラスメント=パワハラは、職権というパワーをかさにきて、人間の尊厳や人格を侵害するような言動や行動を指しており、メンタルヘルスを損なう一因となっています。
以下のような行為がパワハラの一例として挙げられます。
- 身体的暴力(叩かれるなど)
- 精神的攻撃(人前で暴言を吐かれるなど)
- 人間関係からの隔離(挨拶の無視、仲間外れなど)
- 過大要求(引き継いでいない業務の指示や遂行不能な業務量)
- 過少要求(雑用ばかりさせられる)
- プライバシー侵害
パワハラが深刻化、長期化しやすい要因として、医療の現場ではスタッフ全員が強いストレス環境下におかれること、仕事の重要性から厳しい指導や言動が許されがちなこと、女性が多く人間関係がウェットなものになりやすいことなどが挙げられます。
上司や医師からのパワハラ
上司や看護師長、看護部長らからのパワハラのターゲットになりやすいのが新人看護師です。本来新人に必要とされる指導や教育を行うどころか、「無能」「必要のない人材」といった暴言を浴びせて、看護師の自信を喪失させてしまいます。
理不尽な言葉に反発を覚えたとしても、職位の高い相手に反論することはかないません。上司一人との関係だけでなく、複数の看護師からいじめや嫌がらせを繰り返されるケースもあります。
医療現場において、医師と看護師とは役割や立ち位置が異なっているにも関わらず、「看護師は医師よりも下の立場」と見て看護師にパワハラする医師が少なくありません。
例えば、看護師と少しでも意見が食い違うと患者さんの前で責めたてる、物を投げる、叩くといった暴力行為や、多忙になるとそのイライラを看護師にぶつけ、看護師を怒鳴ったりする医師が存在します。
男性医師から食事に誘われたのを断った既婚の女性看護師が、それ以降「無能だから必要ない」と言われるようになり、院内であらぬ噂を立てられてしまった、というケースもあります。
パワハラに遭ってしまったら
本来悩みを相談すべき上司がパワハラをする当人であることで、相談できる相手がおらず抱え込んでしまう、という看護師が多くなります。他の診療科の看護師長や同僚、先輩などで、安心して相談できる相手を見極めることが必要になります。
そのような相手がいない場合に、行政や司法に設けられた「パワハラ相談窓口」を利用する方法があります。各都道府県の労働相談センターや人権110番、法テラスでの無料相談、厚生労働省運営の「こころの耳」といったサイトなどです。
相談する際には、日常的に行われるパワハラの内容を控えたメモや、可能であれば録音や録画があると、より具体的なアドバイスを受けることができます。日記のようなものでも大丈夫です。
根本的解決にはならないかもしれませんが、院内にメンタルケアのプロであるリエゾンナースがいれば、相談をしてみることもおすすめします。パワハラによるストレス、悩みは、転職して環境を変えることで解決できる場合があります。その際には、「次の職場でもパワハラに遭ったら・・・」という不安があることでしょう。
そんな時には転職支援サイトのキャリアアドバイザーに相談してみてください。看護業界に詳しくパワハラについての対処法を相談したり、転職のアドバイスを求めることができます。
気になる求人先について、職場環境はどうなのかといった質問もでき、より良い転職先を見つけるための心強い味方です。
- 上司などが職権をかさに看護師の人権を踏みにじる行為
- 新人看護師がターゲットになったり、医師からのパワハラもある
- 安心して相談できる相手を探す、行政、司法の窓口を利用
- 転職によって解決できる場合もあり、転職サイトが味方に