私が看護師を辞めない理由

看護師として日々働く方であれば、誰しも一度は「看護師を辞めてしまいたい」と考えたことがあるのではないでしょうか？

それを裏付けるように、看護師さんに「看護師業務について常日頃思うこと」について質問をすると、辛く厳しい感想が多く集まる傾向にあります。

看護師として活躍される方は、過酷な医療現場で体力的にも精神的にも辛い中、本当に懸命に業務を遂行しているのですから当然のことです。

しかし、「看護師になって良かった！辞めないで良かった！」といった感想も多く、看護師という職業が素晴らしいものだということが分かるエピソードもたくさんみられます。

そこで今回は、看護師を辞めない理由や看護師になって良かった！といった、明るいエピソードや意見に焦点を当ててご紹介していきたいと思います。

1 看護師を辞めない理由
2 看護を通じて得た「やりがい」は、看護師の原動力！

看護師を辞めない理由

「看護師になって良かったことは？」といった質問に対して、「患者さんに感謝されて心から嬉しいと感じた」「患者さんやご家族に頼ってもらえていると実感できた」「人のためになっていると自分に自信が持てた」といった、喜びの気持ちを答える方は非常に多く見られます。

これらの想いや喜びは、看護師としての大きなやりがいに繋がっているのは、とても素晴らしいことだと言えるでしょう。辛く厳しい医療現場での業務において、患者さんやご家族の言葉や感謝の念が励みになっているというのは、美談だと言えます。

では、これらに加え「看護師を辞めない理由」として挙げられるものにはどのようなものがあるのでしょうか？

１．安定した収入があり、社会復帰にも有利

看護師としての強みとして多くの方が挙げるのが「給与水準の高さ」「再就職や社会復帰が比較的容易」という点です。

世の中が不景気であっても、安定した高水準の収入を得られやすい
結婚や子育て後の社会復帰にも有利
最近はブランクありの潜在看護師の支援制度も充実してきている
看護師は実績や経験がものを言うため、年齢を理由に採用時に落されることがなく、年を追う毎に年収も上がっていく
体力的はとても辛いけれど、給与水準はよい職業だと思うから

こういった理由から他業種へ転職せず、看護師であり続けるという方は非常に多くいらっしゃいます。年齢を重ねるごと、ライフステージを一つずつのぼっていくごとに、看護師資格の強みや重要性を肌で実感するという声も、とても多く聞かれます。

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２．就職先に困らない

一般企業に勤務するＯＬなどの場合、セクハラやパワハラ、人間関係の問題などで悩みを抱えていても、再就職の困難さから転職になかなか踏み切れないといった問題があります。

これに対して、看護師は常に慢性的な人手不足の状況にあるため、転職先・就職先に困らないという特徴があります。このことを看護師という職業のメリットとしてあげる方も多くいらっしゃいます。

全国各地、どこにでも就職・転職先があるから
売り手市場なので、自分の能力や実績をアピールしながら、強気で転職活動が行える
どんな土地に行っても近場で求人を探すことができる
日本全国、どこにいっても正社員として働くことができる
年齢を理由に採用試験を落とされることがないため、一生就職に困らない・フルタイムだけでなく、パートや派遣、契約社員など、色々な働き方を選ぶことができる

他の業種と比較して、全国各地どのような場所に身を置いても就職先を見つけることができる、変化していくライフスタイルに合わせて働き方や職場を選ぶことができる、こういった部分に看護師の強み、魅力を感じている方は非常に多いようです。

３．社会的な信用度が高い

看護師は医療業界でも現場の最前線で働く専門職であるため、社会的信用度が高いという大きな利点があります。この点に誇りを持ち、看護師を辞めずに続けているという方も少なくありません。

初対面の方に看護師だというと、それだけで信用してもらえることが多い・交際相手のご両親からの信頼度が高い
ローンやクレジットカードの審査などが通りやすい
信用度が高いせいか、婚活市場での人気が高い

残念なことに、日本においては女性の社会的な信用度はどうしても男性に劣る部分があるのが実情です。そんな中、看護師はその職業の性質や国家資格であることなどから信用度が高く、様々な面で有利に働きます。この点に大きなメリットを感じ、看護師を辞めずに続けているという方も多いようです。

４．患者さんや周りの人からの励ましや心遣いが嬉しい

看護師を辞めない理由として最も多いのが、患者さんやご家族からの感謝の言葉や励ましが心の支えとなっているから、というものです。

看護師なんて辞めてやる！と思っていても、患者さんに「ありがとう」と言われるだけで「やっぱり続けて行こう！」と思うことができる
患者さんに「あなたがいてくれて良かった」と言われ、自分が必要とされていると実感できた
患者さんやそのご家族が私の頑張りをみていてくれて嬉しかったから
上司や同僚に仕事を認めてもらえると、辞めずに続けていて良かったと思うことができる

患者さんやそのご家族、上司や同僚との関係性や信頼度が、看護師のやる気と密接に関わっており、仕事を続ける原動力になっていることが分かります。

「ありがとう」「お疲れ様」といったささやかな一言を支えに、日々過酷な医療業務を遂行している看護師の方が大変多いということでしょう。

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看護を通じて得た「やりがい」は、看護師の原動力！

看護師の方が「辞めない理由」をご紹介してきましたが、ここで看護師の方が「看護師で良かった！」と感じた経験談を、いくつかご紹介したいと思います。

ケース１　笑顔を褒めていただいた

内科に配属されて２ヶ月ほど経った頃、患者さんに「あなたの笑顔をみると元気がでる」と言っていただきました。マスクで顔がほとんど隠れているにもかかわらず、笑顔を褒めてもらえるなんて、気持ちが伝わったのだろうか？ととても嬉しく思った覚えがあります。

その後、他の科に移動となることを伝えた時は「またすぐに戻ってきてね。あなたがいないととても寂しいし、つまらないから」とまで言っていただけて、本当に感動しました。

これらは、他人からすると些細な言葉のやりとりかもしれませんが、実際に言葉を受け取った私としてはとても心にしみ入るもので、看護師をしていて良かった！これが看護師として働く醍醐味だ！と感じています。

ケース２　患者さんから心を打つお手紙を頂いた

入職4年目の頃、80代のターミナル期の女性を担当することになりました。日頃からとても優しく穏やかな方で、一人暮らしだということもあり、よくお話の相手をさせていただいていました。

お亡くなりになる１週間ほど前だったと記憶していますが、その患者さんから一通のお手紙を手渡されました。

「あなたにはとても良くしていただいたけれど、他に何もあげられるものがないの。申し訳ないけれどもらって下さる？」その言葉にとても切なくなりながらお手紙を頂き、読ませていただきました。

中には中原中也の詩が書かれていて、「とても素敵な詩ですね。ずっと大切にさせていただいますね」と答えると、ニッコリと笑って「良かった喜んでもらえて。私はあなたのお名前を最後まで覚えられなかったけれど、あなたのことはずっと覚えているのよ」と言っていただきました。

その言葉と表情に感極まってしまい、私はその場で号泣してしまいました。この患者さんの出会い・触れ合いがあったからこそ、私は看護師を今でも続けることができていると思っています。

ケース３　患者さんの奥様から忘れられない言葉をいただいた

看護師となって１年目の春に、仕事中に脳梗塞を発症した60代男性が搬送されてきました。その方は一命を取り留めたものの麻痺と構音障害が残りました。

男性の奥さんは搬送当日から退院まで毎日欠かさず面会に来られ、とても細やかにお世話をなさっていました。後遺症は残ってしまいましたが、退院後もご夫婦揃って仲良く来院され、根気強くリハビリに取り組まれており、密かに理想的なご夫婦だなと感じていました。

３年目の年末に、旦那様の方が体調を崩されて入院をされたのですが、すぐに退院して正月は自宅で妻と一緒に過ごすんだと笑顔で話されていました。私もお正月を仲睦まじく過ごすご夫婦の姿などを想像して、ほんわかした気持ちになり、幸せのお裾分けを頂いた気持ちになっていたものです。

しかし、忘れもしないクリスマスの非、夜勤で出勤すると男性の姿が病室になく、確認すると観察室で挿管され、呼吸器につながれた状態となっていました。夕食時に窒息されたと説明を受け、悲しみとも怒りともつかない感情がわき起こったのを覚えています。

駆けつけた奥様に自分が担当することを伝えて勤務に入りましたが、非常に残念なことに明け方になくなられてしまいました。

霊安室に移動するエレベーターの中で、奥様から「搬送されて担当してくれたのも○○さん、最期を看取ってくれたのも○○さんですね。お父さんは○○さんのことを誰よりも信頼していたし、子供のようにも思っていた。

私も昨夜、あなたが来てくれたから安心できたし、心も身体も休めることができたのよ。お父さん、○○さんがいてくれて良かったね」と言葉をかけられました。

エレベーターの中で、私はそれまでの人生で一番多くの涙を流しました。あの奥様からの言葉、あの経験があったからこそ、今の看護師としての自分があると思っています。今でも奥様のお言葉は折に触れて思い出し、自分の指針として大切にしています。

看護師は大変な仕事ではありますが、それと引き換えに何事にも代えられないほどの感動ややりがいを感じることができる素晴らしいお仕事でもあります。

「看護師を辞めたい・・・」そう思ったとき、今までの出来事を思い出してみてください。担当した患者さんや、お世話になった先輩看護師、信頼のおける仲間など、看護師という仕事を通じて出会った方々にもらった言葉は大きな励みとなるでしょう。