医療現場における看護師不足は深刻な状態にありますが、この状況の打開の一つの鍵となるのではないかと注目されているのが「潜在看護師」です。厚生労働省が2012年に発表した推計によると、潜在看護師は現在国内に約71万人いるとされています。
昨今、この潜在看護師の職場復帰を支援する動きが活発化してきてきており、看護師不足の解消を図って復職支援セミナーなどを行う自治体や病院、民間企業などが増えて来ています。
今回は、潜在看護師の職場復帰とそのサポートを行う復帰支援についてご紹介したいと思います。
目次
潜在看護師とは
潜在看護師は、看護師資格を持ってはいるが子育てや介護などの理由から離職し、現在看護の職についていない看護師を指す言葉です。
厚生労働省の発表によると、潜在看護師の数は全国で71万人以上にものぼるとされています。看護職員として働く看護師の数が150万人であることを考えると、潜在看護師が看護師資格保持者に占める割合がいかに高いかお分かりいただけると思います。
潜在看護師は、潜在看護師となるに至った理由によって大きく3つの種類に分けることができます。
- 1.結婚や出産、育児などの事情で退職をした看護師
- 2.看護師を辞した後に他業種に就いている看護師
- 3.心身の不調や年齢を理由に退職し、現在就業していない看護師
これらのうち「看護師として働く意思はあるものの、復職に不安があり潜在看護師となっている」という方の割合が高いのが、1のタイプです。
「子育てが一段落したので働きたいが、ブランクが長く医学の知識や手技に関して不安が強い」
「現在の医療現場のスピード感についていける自信がない」
「自分の希望する条件に合った求人を探すことができない」
「過酷な看護職を続けるだけの体力と気力がない」
「医療や看護技術の進歩に追いつけない」
看護師として復帰はしたいが、上記のような不安や理由があって一歩踏み出せず、潜在看護師となっている方は非常に多い状況にあります。
最近では、そういった方々が安心して職場復帰できるよう支援を行い、慢性的な看護師不足を解消しようという動きが盛んになってきており、70万人の眠れる看護力の掘り起こしを目指して、日々様々なセミナーや催しが企画・実施されています。
潜在看護師はなぜ復職しない?
看護師免許を取得するためには、数年単位の長い時間をかけた学習と実習が必須です。取得に関して多大な苦労と努力が必要な免許ではありますが、一度手にすれば生涯仕事に困ることはないとまで言われる、非常に強い国家資格でもあります。
そのような免許を眠らせておくのは、非常にもったいないだけでなく、ある意味社会的な損失でもあります。そのことは、免許を所持するご本人が誰よりも理解されているはずですが、それにもかかわらず何故潜在看護師は復職をためらうのでしょうか?
そもそも何故看護師を辞めたのか
日本看護協会の調査によると、看護師の退職理由の中で「個人的な環境による理由」のTOP3は以下のようなものとなっています。
- 1位:妊娠や出産
- 2位:結婚
- 3位:子育て
看護師は大半を女性が占めていることを考えると、上記のようなライフイベントが退職理由の上位を占めるというのはうなずくことができます。では、出産や子育てが一段落ついてもなお、復職をしない看護師が今なお多いのはどうしてなのでしょうか?
復職をしない看護師が多い理由
その原因として考えられるのが以下の3つの問題です。
1.子供の預け先が見つからない
子育てがある程度落ち着いたとしても、小さなお子さんがいれば保育園や幼稚園に預けて働かなくてはならなくなります。
しかし、現在は保育園や幼稚園に空きがなく、待機児童の問題もまた深刻な状態にあります。働きたいけれども、子供の預け先がなかなか見つからないという潜在看護師の方は少なくないでしょう。
2.仕事と家庭の両立が難しい
子供がすでに幼稚園や保育園、小学校などに通っている場合でもまだまだ手がかかることには変わりなく、洗濯や掃除、食事の準備や送り迎えなどで忙殺されているというお母さんは少なくありません。
加えて、仕事を始めると家族との時間を確保できないといった理由から、復職に一歩踏み出せないという方も多くいらっしゃいます。
3.手技や知識面での不安強い
結婚・出産前は第一線でバリバリと働いていたという方でも、数年ブランクがあるだけで、技術面や医療に関する知識面で大きな不安を抱えることになります。
日々進歩を続ける医療のスピードについていけない、医療現場の現状が想像できないなどの理由から自信を喪失し、復職をためらう方は非常に多いとされています。
こういった潜在看護師が抱える不安や悩みを少しでも解消できるよう、様々な自治体や大学、医療機関、民間会社などが潜在看護師の復職支援に乗り出しています。
子供の預け先を確保した上で潜在看護師の受け入れを行う医療機関、家族との時間を確保しやすいようなシフトや雇用形態を準備する病院、スキルや医療知識の底上げ・穴埋めが行えるようセミナーを実施する大学や転職支援会社などが増えて来ているのは、非常に好ましい傾向だと言えるでしょう。
潜在看護師におすすめの復職支援
潜在看護師の方が復職に対して抱く不安を取り除くには、その要因を取り除き、看護師としての自信を取り戻してもらうのが一番です。
そこで、ここではブランクの不安を解消できるオススメの復職支援についてご紹介したいと思います。
家族との時間を確保できる短時間勤務
数年前まで、看護師の働き方としては「フルタイムで夜勤あり」がスタンダードなものでしたが、最近はライフスタイルに合わせて多彩な働き方が選べるようになってきています。
実は、育児のための短時間勤務制度は、育休でお馴染みの「育児介護休業法」によって定められています。
この数年でこの制度を導入した病院や医療機関が急増しており、看護師であっても日勤のみの短時間勤務制度やフレックスタイム、残業なしのフルタイム勤務など、働き方の選択肢は広がってきています。
今まで「看護師に復帰したら、家族との時間が大幅に削られてしまう……」と心配していた方でも、子供のための時間を確保できるサポート体制を整えた職場を探すことで、問題や不安を解消することができるようになってきているのです。
短時間勤務の求人に関しては、看護師専門の求人サイトや転職支援サイトで情報を発信・提供しているので、小まめにチェックすることをおすすめします。
スキル・知識面をフォローする支援
数年のブランクがあるせいで、手技やスキル、知識などの遅れが気になり、再就職に踏み出せないという潜在看護師は非常に多いと言われています。
そういった方々をサポートしているのが、医療機関や大学、看護協会などが実施している復職支援研修や支援セミナーです。
潜在看護師の復職支援の走りとも言われているのが東大病院の研修プログラムですが、その一例をご紹介してみましょう。
■5 日間コース
対象:目安として離職期間 3 年~4 年程度
研修内容:医療界・看護界の動向、安全対策・感染対策、個人情報の保護、薬剤、 ストレスマネジメントの講義、薬剤調合、輸液ポンプ・シリンジポンプ、注射、静脈穿刺、採血、一次・二次救命処置の演習、一般病棟見学など。
■10 日間コース
対象: 目安として離職期間 5 年以上
研修内容:上記 5 日間コースの内容に加え、心電図、糖尿病患者・がん患者・重症患者の看護、褥瘡・創傷ケア、体位変換の演習、ICU見学、シミュレーションによる看護実践練習など。
(東大病院が行う看護師復職支援プログラム http://www.medsafe.net/contents/recent/129supernurse.htmlより引用)
最近は、全国各地でこのような潜在看護師の支援セミナーやプログラムが実施されていますので、インターネットネットなどで情報を収集し、興味がある内容のものがあれば参加してみると良いでしょう。
また、看護師転職支援サイトで利用できるコンサルタントやキャリアアドバイザーは、こういった復職支援研修やセミナーに関する情報を収集/蓄積しているケースが多いので、相談してみるのもオススメです。
プリセプター制を導入による支援
プリセプター制とは、新規スタッフを担当の上司や先輩は見守りながら指導を行い、環境や業務にスムーズに慣れることができるようサポートする制度です。
プリセプター制度は新卒者教育を目的として導入する所が多かったのですが、最近は中途採用の看護師や潜在看護師からの復帰を目指す看護師を対象とする病院や期間も増えてきています。
看護師に復帰していきなり一人で業務を行うとなると、不安や戸惑いも大きなものとなりますが、一定期間指導係がついてくれれば看護師としての勘もも取り戻しやすく、安心して仕事を続けられることでしょう。
プリセプター制を導入する医療機関や病院の検索や情報収集にも、看護師専門の転職支援サイトが役立ちます。
- 潜在看護師は全国に71万人以上存在されるとされている
- 潜在看護師の復帰支援活動が盛んになってきており、各地でセミナーや研修などが数多く実施されている
- 潜在看護師を支援するセミナーや研修などの情報はインターネットなどで検索が行える他、転職支援サイトなどで紹介してもらうことも可能
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