患者さんにとっては同じ「看護師」という職業であっても、資格としては、看護師と准看護師の二つに分かれています。この准看護師と区別して、看護師は「正看護師」という俗称で呼ばれることがあります。
正看護師の資格とその仕事の内容について、正看護師になるメリット、資格を取得するための学校など、准看護師の場合との比較を絡めながら見ていきましょう。
目次
正看護師とは?
国家資格である正看護師
正看護師、准看護師を含め「看護師」は、医療・保健福祉の場において医師の診療の補助を勤める職業です。人々の生命に密接にかかわる仕事であるため、国家資格に合格し、免許を取得して初めて、看護師になることができます。
充分な看護知識・技術を身につけるために、看護専門学校や看護系の大学・短期大学を修了し、看護師国家試験に合格すると、厚生労働大臣からの国家資格である看護師免許が与えられます。
女性が生涯続けられる仕事
一定期間での更新が義務付けられている免許は多いですが、看護師の資格は生涯免許です。一度取得すれば生涯「看護師」として働くことができます。そのため、看護師の年齢構成を見てみると、それほど各年代での差がありません。
女性は出産や育児を機に一度仕事を辞めたりセーブしなければならない時期がありますが、状況が落ち着けば、いつでも再び看護師という資格をもって働くことができるのです。
有国家資格の職業であるぶん収入が高めであること、パートや派遣などの非正規でなく、正社員としての雇用で働きやすいこと、看護師の人手は常に不足していて就職・転職先にこと欠かないことも、看護師という職業の魅力です。
正看護師になるメリットは?
やりがいの大きい職業
心身の痛みや不調に悩んでいる方の力になり、回復を直接サポートできる看護師は、当然やりがいの大きな職業です。「白衣の天使」に憧れて目指す方が大勢います。
高齢化社会の進行によって、看護師の活躍の場は病院だけではなく、福祉施設や訪問看護にまで広がり、その充実に看護師の存在が欠かせないものとなっています。
医師不足からは、より高い専門スキルを持った看護師が求められる傾向があり、様々な分野での認定・専門看護師が生まれています。これらの時代の流れから、ますます看護師が求められる場、やりがいを感じられる場は広がっていくことでしょう。
准看護師でなく正看護師になるメリット
正看護師と准看護師では、資格の種類が違うほか、資格取得のための教育機関、学習内容、通学年数も異なりますが、実際に就職してからの仕事内容には、何ら違いがありません。にもかかわらず、正看護師か准看護師かによって収入面、そして就職・転職活動のしやすさに差が現れます。
(正看護師・准看護師(女性)の年代別年収)
正看護師 | 准看護師 | |
---|---|---|
20代前半 | 377.7 | 283.3 |
20代後半 | 453.8 | 332.3 |
30代前半 | 461.4 | 350.3 |
30代後半 | 474.0 | 379.2 |
40代前半 | 497.6 | 396.3 |
上の表は、正看護師と准看護師の年代別の平均年収です(出典は、「平成26年賃金構造基本統計調査」)。
上の表から分かるのは、どちらも年代が上がるにつれて順調に年収は上がってますが、年代が上にいくにつれて、正看護師と准看護師の年収差が広がっていくことです。
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このように正看護師は年収面で大きなメリットがありますが、先ほど書いた通り、転職面でも大きなメリットがあります。
看護師求人の傾向として、規模の大きな病院ほど正看護師の募集が主となり、規模の小さな病院やクリニックほど准看護師の募集が多くなります。
規模が小さく経営に余裕のないクリニックなどではコストを抑える必要があるため、人件費を抑えられる准看護師を優先して採用しているためです。つまり准看護師の方が提示される基本給が低い、ということを示しています。
看護体制がしっかり整っている病院では診療報酬を高めに設定できる、という医療制度があり、その場合の看護師求人は「正看護師」に限定されています。このような病院側の事情が求人に影響していることもあります。
以上から、同じ仕事内容であっても、正看護師の方がより高収入を望める傾向があること、正看護師なら大学病院からクリニックまで、幅広い求人から選べること、求人数そのものが多いことといったメリットがあることが分かります。
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・准看護師の求人先は限られている?
さらに正看護師は就職・転職の際に年齢がネックになりにくい、という特徴があります。40代以降などある程度年齢を経てから「看護師として働いてみたい」と一念発起する方は少なくありません。
そんなとき准看護師になっていざ働こうとすると、求人情報には書かれていなくても実際には年齢制限があり、なかなか働き口が見つからないという現実があります。
正看護師でも年齢によって求人選択の幅は狭くはなりますが、働き口がないということはまずありません。これもまた、正看護師のメリットと言えるでしょう。
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正看護師の仕事内容
病院での仕事
正看護師の勤務先として最も多いのは、病院・クリニックです。ひと口に病院と言っても、大学病院、総合病院などの大規模なものから、個人病院、クリニック、医院、診療所など種類も規模も様々です。
それぞれに正看護師の仕事内容は変わってきますが、共通するのは外来診療での検査や診療補助などの業務であり、病床がある場合には入院患者さんの巡回、生活支援、介助、検査、業務内容の引継ぎがあり、手術補助の業務がプラスされることもあります。
診療科目によっても、仕事の性質や重点が大きく違ってきます。診療科をまたいで転職することで、同じ正看護師の仕事でも新たに学ぶことが多く、幅広い看護を経験・修得できます。
病院以外での正看護師の仕事
近年増加しているのが、老人介護施設や福祉施設など、主に高齢者を対象とした施設での看護師求人です。施設によって看護師が常駐したり、日勤で通ったり、介護者宅に出向いて、バイタルチェックや診療介助、点滴や緊急対応など、必要に応じた看護を提供します。
企業や学校の医務室への勤務や、行政機関への勤務、イベントナース、ツアーナースといった看護師の仕事もあります。
正看護師の資格を取るには
正看護師になるためのルート
正看護師の国家試験を受けるためには、下記のような教育機関の修了が必要です。
高校卒業の場合)
・看護専門学校で3年間学ぶ
・看護大学で4年間学ぶ
・看護短期大学で3年間学ぶ
中学卒業の場合)
・准看護学校で2年間学び、
→准看護師として3年以上勤務ののち、看護専修学校で2年間学ぶ
→准看護師として10年以上勤務ののち、正看護師の通信教育で2年間学ぶ
・高校の衛生看護科で3年間学び、准看護師資格取得後、専攻科で2年間学ぶ
・一貫制看護学校で5年間学ぶ
上記のように、准看護師になって働いてから改めて正看護師になることも可能ですが、多くの方は高校を卒業してから正看護師を目指しています。
それぞれのルートの特色は?
看護専門学校のカリキュラムは実習が多いのが特徴であるため、就職時に即戦力となりやすいと言われます。働きながら学べる4年間の定時制課程を設ける学校もあります。
4年制の看護大学では、別の教育機関からの単位引継ぎが可能な場合があり、既に取得した単位がある方は引継ぎができるかどうか、確認をしてみると良いでしょう。
看護師の勉強と並行して保健師、助産師の養成カリキュラムを受けることができ、卒業時には看護師試験と同時に、保健師・助産師試験の受験資格を得られるという点も年制看護大学の魅力です。
この保健師・助産師養成カリキュラムは、看護専門学校でも、4年制として実施するところが増えてきています。
3年制の看護短期大学では、なんといっても1年早く国家試験受験資格が得られるのがメリットです。正看護師として出来るだけ早く働きたいという方に向いています。
いずれの学校で学ぶにしても、誰でも入学が可能なわけではありません。まずは入試のためにしっかり勉強しなければならず、そのための予備校もあります。正看護師を目指すときには、将来の働き方を見越して計画的に情報を集め、しっかり準備しておくことが大切です。
- 国家資格であり、一度取得すれば生涯看護師として働ける
- 准看護師に比べ高収入が望め、求人機会が豊富というメリット
- 病院での正看護師の仕事は、規模や診療科によりそれぞれ
- 正看護師になるためにはいくつかのルートがある
- それぞれの学校の特色を知り、計画的に資格取得を目指そう
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