看護師の守秘義務について



看護師には守秘義務が課せられているということをご存知ですか?その病院に勤務している間はしっかり意識できても、職場を退職するとその意識が薄れてしまう看護師も多いようです。

ここで、看護師の守秘義務について今一度考えてみましょう。


守秘義務とは

守秘義務とは、「職務を遂行する上で知り得た情報を外部に漏らさない」よう定められている法律です。

特定の職業に定められていますが、今は個人情報を取り扱う仕事が増えていることもあり、守秘義務がある職業は多いです。弁護士や警察官などはもちろん、医師や看護師など、医療従事者にもその法律が課せられています。


看護師の守秘義務は非常に範囲が広いです。例えば、末期がん患者の余命が守秘義務であることは想像に難くないと思います。

しかし守秘義務違反はこれだけではなく、ほんのちょっとしたことでも守秘義務違反になりますので、看護師はその点を肝に銘じて職務を遂行しなければなりません。


看護師の守秘義務、実際にあったトラブルとは


実例1:入院した患者のことを共通の知り合いに話してしまう

これは守秘義務違反でもっとも多い事例です。自分の知り合いが入院したり、通院してきたときに、共通の知人にその内容を話してしまうという事例ですが、「○○さんが××の病気で入院してるのよ」などと気安く話してしまうのは、近況報告ではなく守秘義務違反になりますので、絶対にしてはいけません。

こちらの事例では、言われた方は入院の事実を誰にも言うつもりがなかったため、非常に気分を害し、本人に伝えた上に病院にも伝え、守秘義務についての教育を徹底するよう申し入れたそうです。

実例2:身内に患者の容体や症状を話してしまった

配偶者や親など、自分の身内に仕事のことを話すのは、家庭ではよくある風景だと思います。しかし看護師の場合は、その内容が守秘義務に抵触してしまう可能性があるので、くれぐれも気をつけなければなりません。

ある看護師は、配偶者に共通の知人が余命半年であることを話してしまい、つい配偶者がその知人の家族に「お宅のお嬢さんは余命半年だそうで……」と言ってしまったことで、患者の身内は大変怒り、精神的苦痛を受けたとして損害賠償を求める訴訟にまで発展してしまいました。

実例を見てもわかるように、守秘義務違反は国家の一大事というような重要な秘密を漏らしてしまうことよりも、近所の人、家族、友人など、身近なところをきっかけに発生してしまうケースがとても多いです。


看護師の守秘義務に関するQ&A


看護師を退職すれば、守秘義務は消滅しますか?

看護師を退職した、またはほかの病院や施設に転職したという場合も、これまで働いていた職場での守秘義務は継続します。もちろん、新しい職場に転職すればその職場でも守秘義務が課せられますので、そちらもきちんと守らなければなりません。

ちなみに、入院または通院していた患者が死亡した場合は、その患者に対しての守秘義務は消滅すると考えるようです。

これは患者が死亡することで、その人が持っていた地位や権利自体が消滅すると考えられるからだそうですが、例外もあるかもしれませんので、患者に関することは一切口外しないようにするのが一番ですね。

守らなかったら?

守秘義務違反が発生した場合、違反した看護師は法律により6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金という形で処罰を受ける可能性があります。

ただし、これは守秘義務違反に対する処罰であり、守秘義務違反をしたことによってその被害者が訴訟を起こし、損害賠償に発展した際にはその賠償金が別途発生するということも考えられます。その賠償金額においてはいくらまで、と決まっているものではないため、数百万円に上る可能性もあるのです。

前述したように、守秘義務は退職後も継続しますので、退職後に守秘義務違反をしてしまった場合でも処罰を受ける対象となりますので、気をつけてくださいね。

対策は?

守秘義務を遂行するには、日々の心がけがとても重要になります。絶対に漏らしてはいけない守秘義務については自然と意識できるものですが、ちょっとしたことほどついうっかり人に話してしまうものです。

地域の医療施設で働いている人ほど、知人が患者として訪れることが多いと思いますので、「他人の話は一切しない」くらいの気持ちでいるように心がけましょう。


また、同僚と仕事の話を外でする際にも注意が必要です。通勤電車などで患者について話していたら、横に立っていた人が患者の知り合いだった……ということもありえます。公共の場では個人を特定できる内容の話は避けるほうが無難ですね。

最近問題になっているのが、SNSを通して起こる守秘義務違反です。SNSは遠方の友人と気軽にコミュニケーションを取ることができますし、写真を掲載することで思い出を残しておくことができる画期的なツールではありますが、個人情報を掲載してしまったり、幼稚園や保育園、学校などで撮影した集合写真を掲載してしまったりしてたびたびトラブルが発生します。


看護業界における守秘義務にもSNSは大きく関わる可能性があり、自分が仕事で感じたことや職務内容を悪気なくつい掲載してしまうことで、守秘義務違反が発生する恐れがあります。

SNSには、職務内容に関わることを一切投稿しないようにするのも、守秘義務違反が起きないようにするための重要な対策です。

こうしたちょっとしたことに気をつけること、そしてそれを継続することが、守秘義務違反を防ぐことに繋がりますので、ぜひ励行していきましょう。

<看護師の守秘義務について・まとめ>

  • 守秘義務とは、職務を遂行する上で知り得た情報を外部に漏らさないように定められている法律
  • 看護師には守秘義務が課せられている
  • 守秘義務は、退職したり、転職した後も継続する
  • 守秘義務違反をした場合、6ヶ月以下の懲役や、10万円以下の罰金という処罰を受ける可能性がある
  • 「看護師の守秘義務違反はほんのちょっとしたことで起こりえる」ことを肝に銘じて職務を遂行しなければならない


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