平成26年度診療報酬改定の影響度



患者さんが病院に支払う診察費・治療代・入院費などは病院が勝手に料金を決めている訳ではなく、国が定めたガイドラインに従って計算されています。こうした診察費・治療代・手術費などをひっくるめて「診療報酬」と呼びますが、この診療報酬は2年に一回見直しがされ、診療報酬改定が行われます。

この診療報酬改定によって、看護師のお給料や医師や病院など医療関係者への報酬が影響を受けることになります。


一番最近では平成26年4月に行われました(この記事は平成26年11月に執筆)。では、平成26年度診療報酬改定でどのような影響が出るのか?ここでは、看護師の皆さんが働く病院にテーマを絞って説明します。

結論から言うと、今回の診療報酬改定は大病院の経営が厳しくなる方向で改定されました。より詳しく言うと、「7対1病床」型の病院の判定を今までよりも厳しく行い、病院への診療報酬を減らそうとするものです。この点、もう少し細かく見ていきます。


7対1病床とは?

「7対1病床」型病院とは、患者7人に対して看護師1人を配置している病院のことを言います。ただし、単に患者7人に看護師1人を配置するだけではダメで、いくつか条件があります。

この条件をクリアすると「7対1病床」型病院と認められるのですが、そうするとより高い診療報酬を患者に請求することができます。詳しくは、7対1看護体制とは?をご覧ください。

この診療報酬は病院にとって「売り上げ」にあたりますので、診療報酬が高ければ高いほど病院にとって収益力が上がることになります。この「7対1病床」の判定を厳しくするということは、病院からすると「売り上げ」が減るリスクにさらされることになります。後で改めて書きますが、今回の診療報酬改定を通じて国は(もっと言えば厚生労働省は)病院経営の在り方を変えようとしているのです。


なぜ7対1病床を減らそうとするの?



7対1病床型の病院は、単に看護師の数が充実しているだけでなく、重症患者に高度な治療を施したり、すぐに手術をする必要のある患者を扱う急性期病院であることが一般的です。

今後の高齢化社会を見据えて高度な医療を提供できる病院を増やそうと、厚生労働省は7対1病床型の病院にすれば診療報酬を上げる、という施策を出しました。


この施策が導入された2006年当初は4万程度の病床しかなかったのに、2012年には35万を超える病床になりました。これは、病床全体の実に4割にものぼる数字で、厚生労働省の見込んでいた数字を大きく上回ることになりました。

7対1病床型の病院が増えるということは、より高い診療報酬を支払う病院が増えるということで、医療費の増大に拍車をかけることになりました。今後の高齢化社会を考えると更に医療費が膨張していくことが予想されるため、7対1病床型の病院の数を絞り込むことで少しでも医療費の伸びを抑制しようと、今回の診療報酬改定につながったと思われます。


7対1病床に対する診療報酬の削減策

では、具体的に7対1病床病院に対して、診療報酬を下げるためにどのような改定がされたのでしょうか?大きな変更点でいえば、以下の3つです。

・平均在院日数の計算を厳格化

平均在院日数とは、患者が平均で何日入院しているかの日数で、7対1病床病院では18日以内であることが必要です。この数字は重症患者を受け入れても、あまりに長くに渡って入院させないようにするための措置なのに、この仕組みを悪用して、短い期間の手術で済む患者(=短期間の入院日数で済ませられる患者)を多く受け入れて、意図的に平均在院日数を減らしている病院がありました。

今回の改定で、平均在院日数の計算で対象となる手術の種類が絞り込まれ、これまでのような在院日数の「偽装」が難しくなり7対1病床の判定が厳しくなりました。


・ICU(集中治療室)への入院判定の厳格化

ICUで患者の治療を行うと、一般病棟に較べてより高い診療報酬を請求できます。これを悪用して、本来であれば一般病棟での治療で済むはずの患者までICUに送られるケースがありました(というか、そういう病院がありました)。今回の改定により、ICUへの入院の判定が厳しくなり、重症度の低い患者をICUに送ることが難しくなりました。


・重症患者の判定基準を厳格化

この記事では何度も「重症患者」という言葉を使っていますが、病院の側で勝手に重症患者かどうか決めていい訳ではなく、判定にあたって厚労省が定めた基準があります。具体的には、看護師の手がどの程度かかるかを数値化しています。7対1病床型病院では、この重症患者の割合が入院患者の15%以上であることが必要とされています。

これまでは、この重症患者の判定にはお手盛りな部分もあり病院側に有利な判定が可能でしたが、今回の改定でその判定が厳しくなり、7対1病床の条件を満たすことが厳しくなりました。


看護師への影響は?

以上が、平成26年度診療報酬改定の病院(おもに大病院)への影響ですが、看護師には具体的にどんな影響があると考えられるでしょうか?大きく言って、2つ考えられます。

・大病院の看護師の給料が下げられる?

今回の改定は大病院の経営を少なからず苦しくします。その分、病院側の収益が減ることになるのですから、そのしわ寄せの一部が医師や看護師のお給料にも反映することが予想されます。つまり、看護師のお給料も以前ほど上がりづらくなる可能性はあります。ただしこれはあくまで予測で、実際にどの程度の影響があるかは時間が経ってみないと分かりません。


・病院看護師が余り出す?

上で書いた通り、7対1病床型病院の判定が厳しくなると、その判定から外れる病院も多数出てくることが予想されます。するとそれらの病院では今までのような規模を維持することが難しくなりますので、医師や看護師をリストラすることが考えられます。つまり、病院看護師が今後少しずつ減っていくことが予想されるのです。



以上、平成26年度診療報酬改定の影響について駆け足で紹介しました。ちなみに、厚生労働省は今後どういった病院体制を目指そうとしているのかは別に話があるのですが、それは改めて別記事で紹介したいと思います。

<参考サイト>
平成26年度診療報酬改定について |厚生労働省


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